誕生会
朱里お嬢様の誕生日がやってきた。
朱里お嬢様の高校の友人、向井地さんを招いてお誕生会をすることになった。
向井地さんのところは食品を扱う大企業なのだ。
朱里お嬢様に喜んでほしい一心でAは寝不足になりながらも、お誕生会の準備をした。
朱里お嬢様よりも先に高校の友人がやってきた。
「いらっしゃいませ。皆様、パーティドレスをせっかくですから着てはいかがでしょうか?」
「ありがとうございます。」
次に向井地さんがやってきた。
「Bさん。ありがとうございます。」
「A、お前大丈夫か?寝不足が見てとれるぞ。」
「朱里お嬢様の為ならよろこんでこの身を捧げます。」
「そっか。喜んでもらえるといいな。」
全員が揃ったところに、主役である朱里お嬢様が帰宅した。
「お誕生日おめでとう(ございます)朱里(お嬢様)」
「みんな。ありがとう。」
「主役が制服のままでどうするの。」
友人に誘導され、朱里お嬢様もドレスに着替えた。
二人のお礼を言いたい人間の間の悪さが物語を生み出した。
美音お嬢様の元にAはお礼を言いにいった。
この誕生会を企画したAへのお礼を言おうとした朱里お嬢様の目に飛び込んだ光景が彼女の抑えていた感情を爆発させた。
「美音お嬢様。ありがとうございます。」
「良いのよ。A君が大好きな朱里の為でしょ?」
大好きな朱里の為という言葉が引っかかり返事に困っていた。
「そこまで思われている朱里がうらやましいわ。」
「Bさんも美音お嬢様のことを大切に思っていますよ。」
(Bさんも美音お嬢様のことが好きなんだし、間違ってないよな)
「ありがとう。」
ボディランゲージとしかいいようがない風景だった。
美音お嬢様がAに抱きつき、Aはその身体を受け止めてしまった。
それを見た朱里お嬢様は、自分の部屋に走った。
その瞳には涙が浮かぶ。
(どうして?目の下にクマまで作って私の誕生日をお祝いしてくれたAが向井地さんと抱き合っているの。ちゃんと背中に腕まで回して。私は、Aのこと、大好きなのに)
そんな朱里お嬢様のことを見た人物、Bと白間美瑠は驚いた。
「Bさん。朱里、泣いてましたね。」
「おい、こら。A!美音お嬢様から離れろ!」
抱き合っているAと美音お嬢様を見て、二人を離しにBは走った。
「別に良いじゃない。B」
「急に美音お嬢様が抱きつきだすものですから、他意はありません。」
「そんなことより朱里お嬢様が泣いていたぞ。」
「なんで?」
「おそらく抱き合っている二人を見たんだろ。さっさと行って来い。俺も決着つけるからよ。」
「はい。じゃあ、また後で。」
Aは、朱里お嬢様のもとにかけだした。