執事達の事情
Dさんの屋敷のパーティーへと高橋、向井地、小嶋のお嬢様達とその他の人々及びその執事達はやってきた。
お嬢様用の食事を皿に取りながら二人の執事がほぼ同時にため息を吐いた。
「「へ?」」
「Bさん。」
「あぁ、Aか。」
「向井地様の家も招待されたんですね。」
「まあ、そっちもか。」
「はい。」
「さっきお前ため息ついていたろ。」
「そういうBさんだって。」
「どうせ。朱里お嬢様に好きってまだ言えてないからだろ。」
「そ、そんなことないですよ。」
「わかりやすいな。興奮しすぎだ。」
「Bさんだって、美音お嬢様に好きって言えばいいのに。」
「お前うるせえよ。」
小声で話しているから回りには聞こえないが、二人は似た者同士のようだ。
お嬢様が好きで、想いを伝えられないくせに、身体の関係まで持っていて、現状が良いと思っていたりする。
「うぅん。そんなことより聞いたか。Cが真子お嬢様と両想いになっているって。」
「あの人はハーフで、真子お嬢様も上にご兄弟がいますからね。」
「まあな。そんじゃまたどっかで会おうぜ。」
「色々頑張りましょう。」
屋敷に戻った朱里お嬢様は就寝前に口を開き、Aに質問をした。
「ねぇ、AはDさんのことをどう思う?」
「礼儀正しくて、完璧な人だと、思います。」
なんとか執事として仕事をこなしている自分なんてDさんの足元にも及ばないという思いからAは、言葉を紡いだ。
「Dさんは完璧すぎるわ。でも、私はAみたいに頑張っている人の方が好き。」
その顔は落とした照明の影響でAからは見えなかった。
「・・・おやすみなさいませ。お嬢様。」
Aは、朱里お嬢様の部屋から出てしばらく涙が止まらなかった。