揺れるもの
正輝の目の前で彩が踊っていた。
正確には他のメンバーも踊っているのだが、正輝は彩のマネージャーの為、彩を見るようにしている。
しかし、彩の状態が問題なのだ。
水着、裸体に近い布切れを纏った姿で、ぴょんぴょんと飛び跳ね、彩のような女の場合、胸の脂肪も一緒に揺れる。
正輝とて男なのだ。
これは仕事と言い聞かせ、我慢するのだった。
(なんなんだ、この感情は?彩の笑顔が僕以外に向けられていると思うと嫌な気持ちになっている。それに身体が熱い。彩とまたしたいって思うのはなんでだろう。)
正輝は、他のメンバーへと視線を向けるが、二人以外に心を動かされなかった。
一人は言わずもがな、彩だが、もう一人は、梅田彩佳だった。
(魔女。なんであの人がここにいるんだ。)
(やっと気がついたんだね。ワンちゃん。さや姉のことを頼むよ。)
梅田彩佳は、福岡の魔術師の末裔なのだ。
彩のことを心配していた人物、山田菜々に占い師に化けてリサーチした結果、新しい恋が始まれば問題ないとふみ、彩の帰路に捨て犬を置いた。
その捨て犬に人間としての情報をある程度埋め込んだ存在が、正輝だったのだ。
正輝は、魔女に怒りも少し湧いたが、彩と会えたのは彼女のおかげと目線で語った。
(あなたのおかげで僕は彩と会えた。ありがとう。)
(どういたしまして)
だが、正輝を狙う視線があることをまだ誰も知らない。