進展編
正輝の改造
彩は今日のことを思い出しながら入浴していた。

「彩、ちょっとええ?」

「正輝はさっき入ったやろ?」

二人はドア越しに話をしているがどこかぎこちない。

「仕事して良い?」

「正輝は元犬やからあかん。」

「じゃあ鍵ちょうだい。買い物に行きたいから。」

「明日、仕事やしな。五時までに部屋に帰るんやったらええで。」

「ありがとう、彩。もう寝るわ。おやすみ。」

「あぁ、おやすみ。」

元犬である正輝には学歴もなく、まだ無知な点があり、就職先などないに等しかった。

「ほんじゃ、行ってくるわ。五時までに帰って、知らん人について行くなよ。」

「わかっている。行ってらっしゃい。」

戸締まりはしてくれていたので、正輝は五分計ってから部屋を出た。

しかし、そこには彩が立っていた。

「彩、忘れ物?」

「ほんまのこと言い。どこに行く気やねん。」

「昨日の彩、ちょっと困ってた。僕も力になりたい。」

「そんなことやろうと思った。私の力になりたいなら、ついてきい。」

正輝は彩に連れられ、美容院に行き、スーツを着けさせられ、難波の劇場にやってきた。

「ここって彩の活動拠点だよね?」

「そうやで。正輝にはマネージャーになってもらう予定や。昨夜スタッフさん達に電話しまくったんや。」

「ありがとう、彩。」

『コンコン』

「はい。」

「山本。その男が加藤君か?」

「はい。昨日話した加藤正輝です。」

「よろしくお願いします。」

「山本が所属するNMB48の劇場支配人の金子だ。・・・加藤君。山本のマネージャーとして、君を採用する。」

「ありがとうございます。」

「ありがとうございます。金子さん。でも、急に私のマネージャーって務まりますか、ね?」

「彼のフォローは山本、君と〇△に頼む。オホン。山本、君が恋愛禁止の身であることを忘れるな。」

(正輝に過保護すぎて誰かに彼氏と思われたんかな?)

「彼氏はいませんから大丈夫ですよ。」

(世間一般でいう肉体関係まで行っているけど、犬やったのを信じる方が無理やから、私の同居人や。)

「お前まで叩かれたら大変なことになる。これが加藤君の契約書だ。」

「はい。渡しておきます。」

こうして、正輝は彩のマネージャーになった。

二人に多くの試練が待っているが、それは別の話。


■筆者メッセージ
海遊館行ったり、買い物行ったり、べったりというよりべっとりな二人が恋愛関係だと思われない方がおかしい話。
劇場への鎖をアホみたいにくぐって入るっていう展開も考えたけど、それはお縄になり、ニュースになるかもレベルなので、却下しました。
時期的にドリアン少年が出る前になります。
光圀 ( 2017/02/26(日) 06:40 )