新生活
彩の目の前にハンカチが出てきた。
「彩さん。涙を拭いてください。」
「え?」
彩はようやく自分が泣いていたことに気がついた。
「あぁ、ありがとう。正輝。」
「僕はどうしたらいいですかね?」
「え?」
「変じゃないですか?こんな男と女性の彩さんが一つ屋根の下に・・・。」
「記憶喪失でも何でもええわ。あんたの免許証の住所が何故かここやねんから、好きなだけおればええやろ。」
「良いんですか?」
「その代わり、家事とかしてもらうで」
「この家を燃やすんですか?」
「そっちの火事やない。家事や。炊事、洗濯、掃除のことや。」
「大変ですね。」
「あんたがすんねん。」
「はい。」
正輝の従順ぶりが犬そのものだなと思う彩なのだった。
「まぁ、今日は私が作ったる。見て覚えるんやで。」
「はい。」
「今日は焼きそばを作るで。」
「今日は焼きそばを作るで。」
「顎までマネすんな。」
「顎までマネすんな。」
「アホと違うか?」
「どうせ。僕なんて彩さんに拾われなければあのまま死んでたんだ。」
「落ち込むな。」
彩の生活は前途多難なようだ。
二人はどうなるのだろうか?