兒玉遥編
愛の風邪薬
誰しもかかったことのある病気、それは風邪。

遥が風邪をひいたある日の逸話だ。

その日は、遥が東京での仕事を終えて博多に帰ってくる為に、光圀は心配していた。

キャリーバッグを引いて遥が劇場にやってきた。

光圀は遥の様子がおかしいことに気がついた。

「兒玉。ちょっと待った。」

「え?」

「・・・やっぱり、すごい熱だ。・・・尾崎さん。兒玉の熱がすごいので、送迎してきます。・・・はい。失礼します。」

「俺が送っていく。今日はゆっくり休んで」

「はい。」

遥の家に着くと遥の母親は出かけるところだった。

「遥。今日はレッスンじゃなかったの?」

「マネージャーの大塚です。兒玉は熱が出ていたので、送迎してきました。」

「私これから出勤なんですけど」

「僕がお母さんが帰るまで兒玉の面倒を見ていますよ。」

「すみません。なるべく早く帰りますので。家のものなんでも使ってください。お願いします。」

玄関のドアを閉めた途端、遥が光圀に抱きついた。

「遥。部屋に行って、寝るんだ。」

「大塚さんの夜の注射してくれるなら行きますけど。」

「じゃあ、さっさと行こう。」

「はーい。」

夜の注射とは言わなくてもわかる。

ぺニス及び、セックスのことである。

足の踏み場はあったが遥の部屋は物で溢れかえっていた。

そんな部屋に足を踏み入れたものだから、光圀は遥をベッドにドンした。

「大塚さん。汗かいているんですよ。脱がせて、いっぱい汗かかせてください。」

何度も肌を合わせた影響もあるだろう。

光圀は遥をあっという間に脱がせて、自身も全裸になった。

「遥。」

「大塚さん。」

二人の荒い息が遥の部屋に響く。

夜の注射を終えると光圀は遥にタオルと下着、寝巻きを渡して、キッチンにお粥を作りに向かった。

「遥。お粥食べて、薬飲んで、寝ろよ。」

「食べさせて」

「しょうがねぇな。ふーふー。はい。あーん」

「あーん。」

「旨いだろ?」

「お母さんの料理もおいしいけど、大塚さんの料理もおいしい。」

「風邪、治ったら今度料理教えてやるよ。」

「やったー。」

「その為にも早く治そうな。」

「はーい。」

そういって遥は口を開けて次をねだった。

遥が寝たのを確認すると、遥の衣類を洗濯機に放り込み、お粥セットの洗い物をして、夜用のうどんの仕込みをしているうちに、遥の母親が帰宅し、バトンタッチとなった。

「大塚さんでしたか?遥の為にお粥とうどんまで作って頂いてありがとうございます。」

「困ったときはお互い様です。兒玉によろしくお伝えください。」

「お気をつけて」

玄関のドアが閉まると遥の母親は口を開いた。

「あの人が未来の義理の息子か。頼もしいわね。」

「くしゅん。風邪移ったかな?」

翌日、光圀が風邪をひいて仕事を休むのだった。

■筆者メッセージ
ママにはバレバレである。
理由は二つ。
一つは娘であるはるっぴの話題によく上っている等、長年の付き合いからくるもの。
もう一つは、したんだから匂いがするという嗅覚による情報である。
光圀 ( 2017/02/17(金) 11:25 )