家族の存在
美桜は捻挫だった。
しばらくの通院が必要とのこと。
「ダンスレッスンは休ませる。朝長の送迎係は大塚君に頼むよ。」
「はい。わかりました。」
「うん。大丈夫。じゃあね。」
二つの電話が終わった。
「大塚さん。大塚さんの家に連れていってください。」
「これも何かの縁だ。別に良いけど。ただ、着替えとか要るだろ?とりあえず朝長の家まで衣類を取りに行こう。」
「ありがとうございます。」
光圀は昔のまま優しかった。
光圀は光圀の家に着くと、荷物と美桜を置いて、シャワーを浴びに向かった。
美桜は光圀のリビングを見た。
ただただ広い空間、その一角に写真立てが二つ、一つはどこか光圀に似た雰囲気のおじさんとおばさんの間に子供が一人写った写真。
おそらくご両親と光圀の幼少期のものだろう。
幸せな家庭に見える。
そして、もう一つは共同生活時代の光圀と七人のメンバー。
その写真に写る光圀は、心の底から笑っていた。
「朝長、何を見ているんだ?」
「写真立ての写真。大塚さんは私達と離れて平気なんですか?」
「昔の俺とは違うよ。離れていてもどこかで繋がっているって思っている。だから、大丈夫だ。」
「大塚さん。お願いして良いですか?今だけは温もり分けてあげます。」
「ありがとう。」
美桜は光圀への感謝を込めて自身の身体を使って、恩返しをするつもりのようだ。