残されたもの
莉乃は、タクシーを呼んで劇場に向かった。
エレベーターに乗り込み、目的の階まで向かうだけだった。
「おう。指原。大丈夫か?」
「なんとか。」
控え室に向かうとみんなが駆け寄ってきた。
「さっしー大丈夫?」
「さしこちゃん、大塚さん知らない?」
「えっ?今日から難波に出張って聞いたけど・・・」
「そっか。」
「みんな注目!」
尾崎支配人の方に全員が向き直った。
「指原が足を捻挫した。それに伴い、今度のコンサートでは、指原はダンスをしない。椅子に座ってのパフォーマンスになる。後一点、大塚君が今日から一週間、難波の方に出張に出かけている。彼のいない分は他のスタッフでカバーする。以上だ。」
「ふぁーあ。」
莉乃はあくびをすると、その場で昼寝を決め込んでしまった。
普段なら、このタイミングで光圀がジャケットをかけてブランケットを探しに行っているが、今日からはいない。
そう思ってか、松岡菜摘は自身の分も含め、ブランケットを取りに行った。
「さっしー、風邪ひいちゃうよ。」
ブランケットをかけるとき、菜摘はとあるものを見つけてしまった。
今は睡眠欲を優先することにした。
その頃、光圀はメンバーと同様のテストを受けていた。
国語は、漢字の読み、書きに俳句、ことわざといった問題。
数学は、足し算、引き算、掛け算、割り算といった算数でしかなかった。
社会も人名当て、地名当て、選挙に対する意識を記入しろといった問題。
理科は実験について、化学式の記入だった。
英語も簡単すぎた。
「さっしー、起きて。時間だよ。」
「うーん。」
博多での仮眠が終了した。
「はい。さっしー、鏡。さっしー、悪い虫にでも刺されたみたいだね。」
その言葉を発する菜摘はニヤニヤしていた。
まさかと思って、莉乃は自分の顔、身体を確認した。
髪の毛に若干隠れていたが、うなじにべっとりとキスマークが付いていた。
(いつの間に付けたの。光圀の馬鹿)
そんな光圀は、四百九十九点を記録、テストを受けた中で一位になっていた。
そして、最下位になった白間美瑠との勉強が始まることになった。