難波へ
朝食を食べた光圀は、庭先にある小部屋にいた。
そこには、光圀の両親の位牌と遺品があった。
光圀がここに来た目的は、しばらく留守にする報告、お守り代わりに写真を取りにきたのだ。
写真立てごと持ち上げたとき、カラッという音がした気がしたが、急ぐべきと考え、小部屋を後にした。
「それじゃ、莉乃。行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
二人は口付けを交わし、離れていった。
大阪まで眠り、その後の光圀は、子供のように目を輝かせながら、難波に向かっていた。
というのも、亡き父は鉄道好きで、光圀に鉄道の素晴らしさを語っていた。
運営側が用意してくれていたホテルに光圀はチェックインした。
難波の劇場に連絡を入れると、数分後に光圀と同い年くらいの男がやってきた。
「HKTの大塚さんですね?NMBの加藤と言います。」
「よろしくおねがいします。」
名刺交換をし、スタッフパスを受け取った。
相手の名前は、加藤
正輝。
光圀は、自分がどれほど狭い世界を生きてきたかを痛感していた。
西鉄ホールは、エレベーターを降りてすぐ右に行けば関係者なら素通りできるが、難波での方法は複雑だった。
複雑すぎて言葉にできないのだ。
光圀が気が付くともう控え室についていた。
「はーい。みんな注目。」
加藤さんが呼びかけると全員の視線が光圀に向いているのがわかった。
「今日から一週間、HKTの方でマネージャーをしている大塚さんが手伝いにきてくれました。みんなも仲良くするように」
「あ、あのー。加藤さん?」
「どうしたん?」
「支配人の尾崎の方からこちらへ出張へ行けとは言われましたが、私は何をしたらいいんですか?」
「なんや聞いてへんのかい。バラエティ番組等で馬鹿なメンバーが多いから、この一週間で頭鍛えたってほしいねん。」
「年齢的に高校生のメンバーでも頭は小学生以下ってメンバーもいるってことか。」
「せやから、今からテストすんで」
「えー!?」
光圀の仕事は学習的教育のようだ。
さぁ、どうなるのだろうか?