帰宅
光圀は病室にて尾崎支配人と今後の方針について話し合っていた。
「以上だ。」
「まあ仕方ないです。それでよろしくお願いします。」
「メンバー全員、君が劇場に戻ってきてくれるのを楽しみに待っているよ。」
「僕も早く退院したいです。」
「それじゃあ、今度は劇場でな。」
「はい。尾崎さん気を付けて帰ってください。」
それから一週間後、光圀は退院を許可された。
「そこで止めてください。」
「はい。ここですね?お代は既に受け取っていますので、どうぞ。」
「あっ、はい。ありがとうございました。」
尾崎支配人達運営の方から過労にさせた責任として入院費等経費は全額支払われ慰謝料もわずかながら支払われていた。
そして、タクシーで光圀は久々に自宅に帰ってきた。
光圀は門を開け、階段をのぼり、玄関前に立ち、鍵を開け、自宅に入った。
「ただいまー」
「おかえり」
確認しよう。
光圀は、当の昔に両親が他界し、返事をする人間は皆無の筈である。
「声に聞き覚えがあると思った。指原さんか。」
奥から莉乃が現れた。
「退院祝いでお寿司取ったから一緒に食べよう。大塚さん。」
「ちょうど良い時間か。後、指原さんだけ?」
「うん。」
(今、この家には俺と指原さんの二人だけか。)
光圀は自分の気持ちをついに自覚したのだ。
それは、莉乃のことを異性として一人の女性として好きであるという感情。
しかし、相手は恋愛禁止のアイドルの一員、光圀はこの感情に蓋をして生きると決めたばかりだが、早くも揺らぎそうになっていた。
一方の莉乃も光圀に対して恋愛感情を抱いていた。
自分達の恋愛は片思いは可である為、今まで通り光圀に接することにしたのだ。
お寿司を平らげた二人は、まったりとしていた。
「大塚さん。お願いがあるんだけど」
「トイレの場所なら覚えているでしょ?昔、この家に住んでいたんですから。」
「違うよ。私をしばらくこの家に置いてほしいの。」
「えっ?目的は?冗談は止めてください。」
「目的は二つ。冗談じゃないから。一つは大塚さんの監視、もう一つは私の花嫁修業。大塚さん料理上手で色々教わりたいなって。(なんてのは口実。そばにいたいんだよ)」
「しょうがないな。宿泊代、授業料等込みで五万円。それで手を打ちましょう。(いろんな意味で俺、また死ぬかも)」
「ありがとう。よろしくお願いします。」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします。」
二人は握手を交わし、共同生活を始めることにした。