喧嘩
光圀は福岡に帰ってきた。
「父上。お帰りなさいませ。」
「千尋。今、帰った。美晴と莉乃は?」
「美晴は寝てます。母ちゃんは二階に···。」
「千尋と美晴を放っておいて?」
「ご飯とお風呂は母ちゃんに頂きました。」
「千尋。寝んねしなさい。」
「父上。母ちゃんと喧嘩しないでください。」
「大丈夫。千尋と美晴の父ちゃんは俺で、母ちゃんは莉乃にしか務まらないから。」
「お休みなさい。」
少し心配な顔を三ケ所に向ける愛娘が寝室に消えていくのを見届けると、光圀は荷物を置き、二階へと向かった。
「莉乃。只今。」
「お帰り。」
「何かあったのか?」
「光圀。美音とどういう関係なの?」
「ほぼ親戚関係。百田進士君は俺の叔父さんを親父と呼んでいる間柄で、向井地さんは百田君にホレていて、ほぼ奥さん状態とくれば···」
「嘘だ!あの子が記憶喪失になる前から知っているんじゃないの?」
「あんまり大声を出すな。子供達は寝ているし、下手したら近所迷惑になる。」
人造人間とはいえ、見た目や情報が同じ為にオリジナルの美音を庇ってきたのが水の泡になってはいけない為に、光圀は許容範囲の嘘をついているが、今の莉乃には浮気の可能性という火に油を注ぐ結果になる。
「私に嘘をついていないっていうなら、キスして。」
莉乃の言葉で光圀は最後の手段に出ることにして、愛する妻に近付いた。
「莉乃。ごめんな。」
一言呟くと光圀は莉乃に口付けをした。