初夢@
福岡と大阪離れた土地でシンクロした出来事が起こった。
「母さん?」
光圀は再びあの日を体験する夢を見てしまったようだ。
「光圀。新しい家族と幸せに暮らしなさい。」
微笑む母に夢だと解っているはずの光圀は動かずにはいられなかった。
「母さん。」
そこで光圀は現実に戻る。
左手に温もりを感じて、そこに目を移すとそこには莉乃がいた。
「莉乃。どうした?」
「お義母さんの夢を見ていたんでしょ?」
「そうだけど。」
「五年前みたいに抱き付いても良いよ?」
「お前、あのとき起きていたのか?」
母の夢と五年前と来れば、光圀があの日見た夢の後、莉乃に抱き付いたあのときしかない。
「あのときも手、握ってあげたけどね。」
嬉しさと愛しさが光圀を突き動かし、莉乃を抱き締めた。
「なぁ、莉乃。・・去年、本村に言われたけど、三人目どうしよっか?」
「作りたかったら、作れば?今日、そういう日じゃないけど。」
「かーちゃん。あしょぼ。」
娘の言葉に二人は当然のように離れる。
しかし、肝心の千尋は両親と反対方向を向いていた。
一難去ってまた一難、数秒後美晴が泣き出すのは別の話。
◎
ところは変わり、大阪にて、
「正輝。」
「オバハン、誰や?なんで俺の名前知ってんねん。」
「それもそうね。貴方に会うのは初めてだもんね。」
「もしかして、兄さん、光圀さんの?」
「あの子にとってなら、貴方にとってもでしょ?」
「母さん。」
抱き締めようと正輝が身体を動かすと虚空をきった。
「正輝。家族と幸せに暮らしなさい。」
そこで正輝の目が覚める。
しかし、正輝の視界には壁しか映っていなかった。
その代わり、腕の中に温もりを感じる。
「正輝。何、私を抱き締めてんねん?」
「彩。兄さんの、母さんが夢に出てきたんだ。」
「そのわりに、新年早々元気やな。」
正輝の股間が膨らんでいることを指摘したのだ。
「彩。二人目欲しくない?」
「そういう日やないし、仁が起きてもえぇなら、してもえぇで。」
「なら、遠慮なく。」
正輝が狼になり、仁が起きなかった為に、遠慮なく一戦が行われたのは別の話。