尋問
美音が仕事に出ると、横山由依が顔をしかめて待っていた。
「横山さん。おはようございます。」
「美音。ちょっときい。」
美音は横山先輩に腕を掴まれて、空いている部屋に連れて行かれた。
「これ、美音と誰や!」
横山先輩の手にしているのはスマートフォンでそこにはデート中の美音と進士、手を繋いでいる状態が写っていた。
「横山さん。この二人、眼鏡しているじゃないですか。私の他人のそら似じゃないですか?」
「そういうことにしといたるわ。けど、彼氏はどうかな?」
横山先輩から美音は解放されたが、次は進士を尋問するようだ。
部屋を出たところに何も知らない進士がやってきてしまった。
「百田さん。ちょうどえぇとこに。」
「どうかしましたか?横山さん。」
「なぁ、私とキスしてくれへん?」
「ダメでしょ!向井地さんの目もありますし、それ以前にどうしたんですか?」
「今度、ドラマの仕事があって、キスシーンがあんねん。」
「すいません。横山さん。僕には彼女がいます。形がどうであれ、彼女を裏切るような真似は出来ません!」
「それって、美音のこと?」
「いいえ。彼女は○○陽子。向井地さんは僕の担当するメンバーです。」
「写真見してぇな。」
「人を写さないのが僕の主義でして、すみません。」
「なぁ、美音。」
「はい。」
美音を横山先輩は呼び、美音に耳打ちした。
「百田さんにキスをせがんでみて。何もないなら、出来るやろ。」
「も、百田さん。私にキスしてくれませんか?」
「向井地さん。目を閉じてください。相手の目があると、出来ないもので。」
スマートフォンを構えている横山先輩のことなど二人は見えていないようだ。
進士は美音に顔を近付け、彼女のオデコに口付けした。
『え?オデコ!?』
「向井地さんに口付け、キスをすれば良かったんですよね?」
「えぇ、そうです。」
「ちゃんとマウストゥマウスでせぇや!」
「百田君!」
「大塚さん!どうされたんですか?」
「これを君に。」
「これって?」
「一人のときに読むこった。」
「向井地さん。あのときはすまなかった。この通りだ。」
「大塚さん。頭を上げてください。あのとき、大塚さんが守ってくれたから、私は生きているんです。むしろ、ありがとうございます。」
「・・ありがとう。俺の友達。」(横山さんは俺が止めておく。その隙に逃げろ。)
光圀に目線で言葉をかけられた気がした美音は、一礼して控え室に入った。
当然、進士も美音に続いて控え室に避難した。
「横山さん。この間のノイエ会、楽しかったですか?」
「さしこが酒飲めなかったのは痛かった上に、千尋ちゃんに睨まれたな。」
「アイツは俺に似たもので。今朝も大島さんに教わったフライングピーポーで起こされました。」
横山先輩の監視の目が今後の二人の課題になりそうだ。