再会
金曜日がやってきた。
この日、小雪さんという名前になっている由紀に会うのだ。
半信半疑だが、俺の夢に出てきた俺をパパと呼んだ少女を信じたいと思う。
「初めまして。小雪です。」
小雪嬢は俺に挨拶を交わしたときに目を見開いた。
「お久しぶりです。由紀姉。」
「人違いじゃないですか。」
「これは失礼しました。」
俺はあらかじめ現在のアドレス等を書いておいたメモを由紀、小雪嬢の手に渡した。
小雪嬢は間違いなく、由紀だ。
周りの黒服、ボーイさんの目を気にして他愛のないことを会話するように努めた。
それは目の前にいる小雪嬢も同様なようだ。
時間はあっという間にやってきて、俺はルール通り、退店した。
◎
土曜日になり、俺はスマートフォンを睨みつけていた。
『♪』
着信音が鳴り響き、スマートフォンに新着のラインが入った。
「私、由紀。龍馬に会って、話がしたいの。」
このメッセージが表示されるということは小雪嬢と由紀が同一人物である証明にすぎない。
「場所と時間は?今日、明日の俺は休みだよ。」
「埼玉県にある○○駅まで来てくれる?」
ベッドタウンである埼玉県は盲点だった。
俺は了承の返事をして、出かける準備をした。
◎
「龍馬。」
そう俺を呼ぶ声がして、周りを見回せば、昨夜はメイクガンガンだったが、薄化粧を施した由紀がそこにはいた。
「由紀。久しぶりだな。元気にしてたか?」
「龍馬。これ、見て。」
由紀の掌中にはビタミン剤の容器があり、そこには糸に近いものがあった。
「それは私と子供のへその緒よ。私にはもう家族が、家庭があるの。私のことは忘れて。」
「あんなところで働くのは旦那さんの借金があるんじゃないのか?」
「貴方には関係ないでしょ。」
「俺はお前と連絡が付かなくなったときから、お前の力になりたくて、就職という道を選んだんだ。東京に出てからのお前のことを教えてくれ。由紀。」
「分かった。けど、場所を移させて。」
「あぁ。」
俺達のヒートアップした会話を聞いて野次馬が集まりかけていた。