大人になって
真実
マユちゃん達の通う幼稚園で運動会が行われた。

お父さんによる種目で俺は父親として、出場した。

運動会が終わり、家路についている俺達に、マユちゃんが爆弾を投げてきた。

「ねぇ、おじちゃん。マユのパパになって!」

その意味が解らない程、俺はガキじゃないし、馬鹿でもない。

当然、マユちゃんの母親である由紀もそうだろう。

言葉を考えている俺に、冷たい水が一滴ぶつかった。

それは大量になり、近くにいる二人にも直撃する。

そう、雨が降りだしたのだ。



あの雨の結果、マユちゃんが風邪をひき、熱を出した。

「由紀。保険証と小児科、内科の診察券は?」

「保険証はあるけど、麻友、今まで病気したことないから。」

「ゴホッ、ゴホッ」

俺は苦しむ麻友ちゃんが放っておけず、以前発見した保険証をその場所から取り出し、彼女を抱えて家を飛び出した。

俺が抱えているこの子は渡辺麻友。

20XX年12月XX日生まれ、血液型AB型。

この年は由紀が上京した年で、十ヶ月引いた月が彼女が受精した月になり、ほぼ必然的に精子の持ち主、父親が判る。

その月は由紀が鹿児島県民だった頃で、十中八九父親は俺、大久保龍馬になる。

強姦魔との子供と言っていたこの子を由紀が胎堕しなかったことも頷ける等全て繋がる。



診察を終えて、俺と麻友ちゃんは帰ってきた。

「お帰り。」

「只今。ただの風邪で薬もらって、服薬ゼリーを買っておいた。」

俺は麻友ちゃんを布団に入れて、由紀と向かい合う。

「麻友の誕生日と血液型、見たんでしょ?」

「あぁ。」

「なら、あの子の父親が誰か判ったでしょ?」

「まだ半信半疑だ。真実を知っているのはお前だけだ。」

「あの子の父親はあなたよ。龍馬。」

「教えてくれ、由紀。お前に、麻友ちゃんに何があったかを。俺は真実を知らずには前には進めない。」

運命の日、由紀は俺に酒を飲ませ、十連続中出しをしていた。

その日は由紀の排卵日で、俺の精子は麻友ちゃんを生成していたのだ。

大学でキャンパスライフを送っていた由紀を狙う目があり、由紀は強姦に逢い、そこを麻友ちゃんが生まれたときに父親になった渡辺さんが助けたわけだが、強姦魔達のボスこそが渡辺さんだったのだ。

麻友ちゃんは生まれたときから、渡辺さんを前にすると泣いていたという。

渡辺さんは鉄道に投身自殺をした。

事故から数日後、自身の犯罪を告白する手紙が由紀の元に届いたが、渡辺家から由紀は煙たがられ、鉄道会社への損害賠償を払っている最中、俺と再会したというわけだ。

麻友ちゃんが俺を認めることが父親になる条件だと思って接してきたが、俺は短期間でその条件をクリアしたようだ。

「それで、龍馬はどうするの?」

「俺は・・・」

答えを言葉にしようとした矢先に、一本の電話が入ったのだった。

■筆者メッセージ
麻友ちゃんは龍馬君と由紀ちゃんの子!
子供時分の龍馬君の夢に出てきた子が再びお父さんの夢に出てきて、お父さんとお母さんを再会させるに至った。
良い感じになっていますが、麻友ちゃんがダウンしているので、クライマックスはお預けです。
光圀 ( 2019/06/25(火) 11:26 )