バレンタイン
2月最大のイベントは節分、恵方巻きとお寿司屋さんや食品会社の人が言うだろう。
しかし、恋人にとってのそれはバレンタインだろう。
恋人、正輝と距離をとりだした彩はスマホを片手に切りだし方を考えていた。
深呼吸して考えた文章を打ち込み、ラインのメッセージとして送信した。
『2月14日。家でチョコレートフォンデュを食わしたる。待っとるで。』
『了解』
正輝からの返事を見て、彩は買い出しならびに準備をしだした。
◎
2月14日当日。彩はシャワーを浴び、準備をした。
今日の彩の勝負服は、見ている美瑠が赤面する程のものだった。
「お邪魔します。」
合鍵を使って、正輝がやってきた。
チョコレートを適度なとろみで保つ為であると同時に彩の作戦でもある。
「さ、彩。なんでそんな格好しているんだ?」
彩の格好はグラビアで二度程している水着(ビキニ)にエプロンである。
「暑いねん。それにあんたしか呼んでへんし。安心せぇ。履いているから。(シャワーは浴びた。覚悟は出来てる。)」
「僕の知っている山本彩はそんなことせぇへん。これ、彩に渡すはずやった逆チョコ。・・失礼しました。」
ビニール袋からチョコレートを取り出し、正輝は身を翻した。
「正輝。待ってくれ。」
カセットコンロの火を消したりしている間に正輝は出ていき、自身の格好を思い出し、彩は部屋から出れなかった。
ライン通話でも、有料の通話でも正輝は出なかった。
ラインメッセージにも既読が付かなかった。
その頃、肝心な正輝は?
「彩のアホ。渡しそびれさせて。」
彩のマンションの近くの駅で服を着てくるであろう彩を待ちながら、一枚の紙を見つめていた。
しかし、一時間待っても彩は正輝を探しに来なかった。
正輝が彩のラインメッセージに気付いたのは正輝の今の住まいの最寄り駅に着いて、スマホを再起動したときだった。