クリスマス
買い物に出かけているとき、正輝が口を開いた。
「ねぇねぇ、アヤ。クリスマスって何?」
「後で説明するわ。」
クリスマスの文化のない異世界の人間でもない限り説明は不要なのだが、発言者は元犬の正輝である為、仕方がない。
「クリスマスってのはな。キリスト教の文化で、そのお偉いさんであるキリスト様の誕生日のことで、その前夜祭であるクリスマスイブにご馳走を食べるのが私が子供の頃よりもっと前から大衆化しているっちゅうわけや。子供は翌朝にサンタクロース、赤い服に白いひげのおっさんからプレゼントがもらえたりするけど、・・・・・。解ったか?正輝。」
「サンタクロースは赤い服に白いひげのおっさんで外人さんでクッキーが好物の不法侵入に密入国する不届き者なんやろ?」
「知っとるんかい。クッキーが好物って初めて聞いたわ。」
「ウィキペディアで調べた。」
映像を見ながら、美瑠は微笑んだ。
◎
彩・正輝ハウスのテーブルに二つのラッピングされたものが置かれていた。
お互い用に選んだプレゼントである。
「せーので、開けるで。」
「なんやろ。」
「せーの。」
二人の顔面が対照的に変化した。
彩から正輝へのプレゼントは、手編みのマフラー。
それに対して、正輝から彩へのプレゼントは絵蝋燭だった。
「正輝。なんやねん、これ?」
「和製イルミネーションなキャンドル。」
「蝋燭でええやないか。ほんまに正輝は。」
正輝のど直球なボケであり、ガチな行動に彩は笑った。
「それよりこのマフラー、いつ作ったん?」
「夜中とか正輝の散歩中とかに作ったんや。」
「ありがとう。彩。」
雪も降らないムードのない雰囲気の中、二人の愛が紡がれる前に美瑠は映像を切った。