弱点
現在へと過去の観察映像も近付いてきた。
正輝がジンベエザメが見たいと要望し、二人は海遊館へ行くことになった。
(海遊館って、菜々ちゃんが好きな場所じゃなかったっけ?)
そんなことを美瑠が思っていると映像の中の彩が動き出した。
「忘れさせてくれや。アホ」
そう呟く彩の掌中には菜々とのツーショット写真が存在していた。
「ごちそうさま!」
デート当日、正輝の元気な声が響いた。
しかし、正輝はちょっとだけ、表情が変わり、口を開いた。
「彩。昨日も山田って言ってた。」
「嘘やろ?」
「ホンマや。菜々さんと何があったの?僕で良かったら彩の力になりたいねん。」
「一回しか言わんぞ。・・私。昔、バンド、今とは別の音楽活動しとって、バンド仲間の男に強引にセックスされた。それ以来、男がみんな同じに見えて、そんなとき、山田と付き合った。ここで寝起きを一緒にして、アイツはこの間の春、出て行った。引き止めたかったんが、本音なのかもしれん。それだけの話や。」
「じゃあ、なんで僕をここに置いてくれるの?僕だって男だし、何回か彩とセックスしているし。」
「正輝以上の馬鹿共は悪びれへんかった。正輝は私が拾った犬が居候の男になっただけや。前も言ったやろ。好きなだけ居れや。」
「彩。変なこと聞いて、ごめんな。それとありがとう。洗い物、僕がするから、準備してきて。」
(加藤さん。ちょっとだけ、菜々ちゃんに似ている。)
そんな正輝は彩のトラウマの原因である男から彩を離すという芸当を見せた。
(加藤さんとさや姉、両思いやん)
美瑠は二人のこれまでの観察映像から答えを導きだした。
そして、正輝が彩の紹介によってマネージャーになり現在に至る。