飼い主と忠犬
美瑠は家に帰ると正輝と彩の出会いが知りたくなり、水晶玉の画像を見だした。
「クーン」
そこに映っていたのは、一匹の子犬。
(加藤さんはいつ出てくるんやろう?)
普通の男女の出会いとくれば、男性と女性が登場人物なのだが、今のところ、女性ーー彩と犬しか出てきていないことに美瑠は疑問を感じた。
拾った犬と全裸になった彩が浴室に踏み入れ、シャワーを犬にあてがうと、光を発され、聞きなれた声が聞こえてきた。
「失礼します。」
急に正輝の声が聞こえてきて、さっきまでいた犬がいなくなっていた。
(もしかして、あのワンちゃんが加藤さん?)
そのまま、水晶玉を見ていると、美瑠や老人と違う魔法使いによって、犬にされた男性が正輝の正体のようだった。
しかも、何故か彩と同じ住所になっていて、仕方なく住まわせていることが判明した。
今、水晶玉に映る二人は焼きそばを食べている。
「んんん(旨い)」
「食いながら喋るな。」
「だって、彩さんの焼きそば美味しいんですもん。」
「彩でえぇよ。正輝の方が一応、年上らしいねんから。」
「さーやーか。」
「なんやねん。」
「ありがとう。」
しばらく二人は良いムードのまま、夜が更け、水晶玉の映像が切れた。
◎
次の日、正輝を見つけた美瑠は実験をすることにした。
「加藤さん。おはようございます。」
「あぁ、白間さん。おはようございます。」
「加藤さん。お手。」
「小谷さんといい、僕は犬じゃないですから。」
彩の前ではボケだった正輝に美瑠はツッコミを受けたのだった。