胸キュン体験
夢の中で年老いた魔法使いに後継者にされた美瑠は少女漫画のような胸キュン体験をすることにした。
一、壁ドン
今、美瑠はスタッフの一人に壁を背にされている。
「白間。この人は誰だ?」
そこに映っているのは、中年男性と美瑠だった。
「お父さんですって。」
「そうか。良かった。」
今のところ、美瑠に恋愛感情はないが、壁ドンにキュンキュンしたのは間違いない。
二、顎クイ
「白間。目の下まつ毛付いているで。」
「え?本当ですか?」
「ちょっと失礼して・・・はい。取れた。」
ティッシュでまつ毛を取ってもらうまでの数秒にキュンキュンした。
◎
そして、加藤正輝がNMBのスタッフに加わった。
ある日、美瑠は久しぶりに壁ドンがされたくて、正輝を対象に選んだ。
周りに誰もいないことを確認し、人差し指を正輝へ向ける。
「チチンプイプイ」
そして、ゆっくりと正輝に近づく。
「だーれだ?」
「白間さん。」
「正解。」
「ふざけないでください。」
他のスタッフの人なら、壁に手をついて、叱ってくる。
しかし、正輝は身体の周りに腕があるだけだった。
「何か用ですか?」
「ごめんなさい。ただのおふざけです。」
「そっか。」
『PPP』
そんな中、正輝のスマホに連絡が入る。
「はい。加藤です。山本さん。忘れ物?届けに行く途中で・・駅で」
「加藤さん。さや姉に忘れ物届ける途中やったんですね。ごめんなさい。早く行ってください。」
「気ぃつけてな。」
正輝は走り出す。
数秒後、美瑠は正輝を追って走り出した。
今まで、美瑠の魔法が効かなかった人はいなかったからだ。
「アヤ。遅れてごめん。」
美瑠は耳を疑った。
「遅いで。正輝。」
劇場、撮影の合間の呼び方と違う二人がそこにいたのだ。
「あんまり女の子を待たせると嫌われるで。」
「僕は他の子に興味ないけど。」
「心配させるなって言ってんねん。」
美瑠の中でファンファーレが鳴り響く。
従順男子とツンデレ女子の絡みを身近にいる知り合い二人がしていることが馬鹿な美瑠にも理解出来た。
(加藤さんは無理でも、さや姉ならかかるかな?)「チチンプイプイ」
スマホを取り出し、水晶玉の画像を開くと、二人の姿が浮かび上がった。
二人の姿を見てキュンキュンしようと決め、美瑠も家路についた。