母の日
ゴールデンウィークだが、撮り溜めで光圀と莉乃はホームタウンである福岡で生活できた。
「ねぇ、光圀。千尋と一緒に大分に帰って良い?」
「良いけど、どれくらい家を空けるんだ?」
「母の日まで居ようと思って。」
「義父さんや義母さんはなんて言っているんだ?」
「夫婦喧嘩か?って心配された。」
「チケットは今からじゃ間に合わないだろ?」
「ちゃんとあるわよ。はい。領収証。」
「解った。たまには親孝行して、孫の顔を思いっきり見せてやっておいで。・・ただ、寂しいから、今日頼んで良いか?」
「馬鹿。」
光圀は、このゴールデンウィークを久しぶりに一人で過ごすことになった。
ただ、莉乃から嬉しいラインが届いた。
『千尋が初めて言葉を発しました。その言葉はジジ。お父さん大喜びだけど、たぶんこれって・・・。』
莉乃のテレビ出演回数は結婚前より増加傾向にあり、光圀は千尋を抱っこしながら、時代劇水戸黄門のレンタルDVDを見るのがほとんどで、その出演者の子役の子のご老公様を呼ぶのがじぃじでおそらくそれが耳に残っているのではないかというのが莉乃の考えのようだ。
○
光圀の姿は母の日参りをする為、墓地にあった。
光圀とどこか似た青年が光圀の前に現れた。
「父さん。」
(この状況、彼の顔、条件からして・・・)
「俺と莉乃の息子だな。姉上の実験に付き合わされて、父光圀に何の用だ?」
「逃げてくれ。父さん。殺し屋が父さんを狙っている。父さんは記憶を失ってしまう。」
その言葉を聞いて光圀は、落ちていた木の枝を拾い、青年に投げた。
「父親の俺に意見を言うなら、俺を倒すくらいの覚悟を見せてみろ。」
「うぉー。」
当然、木の枝は光圀には届かなかった。
「未来の俺がどうかは知らないが、父を信じられないお前の負けだ。」
顔を見ることもなく、光圀は口を開き、青年は涙を流していた。
そして、青年は消滅していった。
墓参りを終えた光圀の前に美音が現れた。
「今日のお昼ご飯は何を食べますか?」
「へ?暖かいからざるうどんでも・・・。」
光圀がお昼ご飯の予定を考えているときに美音はあの装置を投げた。
この装置は対象者の考えている事柄を吸収する働きがあるのだ。
美音は、かつて助けたメンバーのことを思っていた為、聖也の言いなりになったふりをして、光圀の前に現れたのだ。
「なんだ。こんなもの。」
光圀は装置を壊した。
「光圀さん。大丈夫ですか?」
「美音。腹減ったから、この後豚骨ラーメンでもどうだ?」
「それより、警察に電話です。・・大塚さんが倒れておるんじゃ。とにかく来ておくれ。」
美音の電話が終わったのを見届けると光圀は起き上がった。
「警察は俺に任せて。お前は行け。お前が老婆のふりをしたように俺も犯人は老婆だったって言っておく。その代わり二度とこんなことするな。」
「条件を飲む代わりに一つお願いが。・・千円ください。」
「それ、小嶋真子のネタだろ。ほらよ。」
「大塚さん。ありがとう。さようなら。」
「さて、装置の指紋を警察が来るまで拭き取っておくか。」
そして、美音は炎の中、人類の敵と共に消滅していった。