良心
光圀に言われた言葉が美音には忘れられなかった。
しかし、聖也は自身に足が付かないように美音に手を下すように命令する。
美音はこれ以上聖也と自身を犯罪者にしない為に、ターゲットを殺さず、むしろ助けるという選択をとった。
その例の一つ、ターゲットが伊豆田莉奈だったときの話を紹介しよう。
オリジナルの向井地美音と入れ替わるように行動し、ターゲットを殺害せよと美音に命令が下された。
変装用の眼鏡を外し、ターゲットのいるトイレへと入った。
「あれ?みーおん。忘れ物?」
「伊豆田さん。国内から逃げてください。」
「え?どういうこと?」
説明するより証明した方が早いと感じた美音は殺人用小型ナイフを取り出し、自身の腕を切った。
「私は向井地美音をコピーした人形です。私の主人に命令されました。でも、私は一人も殺したくない。むしろ、守らせてください。」
「解った。けど、大丈夫。もうじき、外国に行くから。」
「それを聞いて、安心しました。でも、日本にいる間は気を付けてください。」
美音は言うことを言って、その場から去った。
〇
ターゲットを殺さず、守る行動をとっていた美音の努力が無駄になる事態が発生した。
聖也のクライアントである組織に人間の記憶を奪う装置を作られたからである。
「御主人様。これは?」
「あぁ、これは人間の記憶を奪う装置だ。まずは、お前に使う。」
装置を聖也は美音に向かって投げた。
「嫌だ。私は・・」
装置によって美音の記憶は奪われてしまった。
「・・ここは?貴方は誰ですか?」
「俺はお前のマスターだ。こいつでターゲット、大塚光圀の記憶を奪ってやれ。」
「はい。マスター。」
とある記憶を失った美音は遂に光圀へ襲撃の気を起こした。