不器用
正輝と彩は海遊館内にあるカフェ・マーメイドでジンベエザメラテ、ジンベエザメソフトを注文していた。
「アヤ。これ」
正輝はそう言って、一枚の紙(先程貰ったレシートの裏)を彩に渡した。
『彩。待つとか言っておいてなんやけど、隣に居ないと寂しくて、また一緒に生活してほしい。』
とある人物は海の前で人は素直になるという言葉を残している。
カフェ・マーメイドは大阪湾のオーシャンビューが特徴である。
「アホ。」
文字を読んだ彩は一言だけ言葉を発した。
光圀達が動き、天保山の観覧車に場所が移った。
「彩。・・返事を聞かせてほしい。」
「ちゃんと言葉にせい。加藤正輝の口から直接聞かんと返事出来へん。」
ツンデレなもの言い、ほぼ答えなのだが、そちら側の正輝は、唇を動かす。
「彩。彩の隣で彩のことが待ちたい。やから、もう一度一緒に生活してほしい。」
「そう思っているなら、男らしゅう、自分からキスせい。」
「彩。」
彼女の名前を呼び、正輝は彩の隣に座り直し、愛しい彼女と唇を重ね合わせた。
天保山の観覧車にはこんな伝説がある。
『観覧車の頂上で口付けを交わしたカップルには永遠の幸せが得られる。』
そして、正輝と彩のゴンドラの現在地はもちろん頂上である。
「正輝。二部屋はあるマンションに移ろな。」
「なんで?」
「同棲がバレたとき、言い訳できるようにせんとアカンやろ?」
「なるほど」
先に降りた組は悲劇だったが、正輝と彩は幸せを勝ち取った。
二ヶ月後、世界中に光圀と莉乃の結婚報道が発信されたのは有名な話だ。