不満
光圀が握手会、食事会に参加している頃、莉乃達はというと、元メンバー、多田愛佳と東京のマンション(莉乃名義)でガールズトークをしていた。
「愛ちゃん。彼氏は?」
「さっしー。あんたは私のお母さんじゃないんだから、気にしないの!・・いないのよ。」
「ごめんね。」
ペーパーテストの成績は悪いが、そっち側は鋭い多田は自分が呼ばれた理由がなんとなく分かっていた。
「それより、大塚さん、旦那は元気なの?」
「元気なのは良いんだけど。はぁ。」
莉乃は分かりやすい溜め息をついた。
「何かあったの?さっしー。」
「聞いてよ。愛ちゃん。・・光圀ったら千尋にばっかり構って、私のことは避けているのよ。そりゃ、イクメンしてくれて、料理作ってくれたり、嬉しいけど、私はもう要らないのかな?」
莉乃は、最初は怒り心頭で途中から泣きそうになりながら、光圀への不満を多田に吐き出した。
「さっしー。そんなに不満ならさ。本人に直接言いなよ。さっしー馬鹿のあの大塚さんがさっしーのこと嫌いになるなんて、有り得ないって。千尋ちゃんが生まれてからの大塚さんの行動、思い出してごらん?何かわかるんじゃない?」
『「おはよう、莉乃。」
「只今。莉乃、千尋。」
「莉乃。千尋ちゃん出ます。」
「莉乃。千尋に何かあったら困るから、後ろな。」
「お客さん達、シートベルトをお閉めください。・・今日はどちらまで?」』
莉乃は光圀との最近の出来事を思い返した。
光圀は、愛娘第一主義ではなかった。
昔から、家族を大切にする男で、ちゃんと自分のことも見てくれていたのを当たり前になりすぎて、莉乃は忘れていたのだ。
「ありがとう。愛ちゃん。」
「それじゃ、そろそろ稽古に行ってくるわ。」
「え?あぁ、行ってらっしゃい。」
多田は稽古前に莉乃に会いにきたようだ。
夜中、千尋とベッドに入ろうとした莉乃のスマートフォンにラインが来た。
『今日の晩飯は焼肉だった。
早く莉乃と千尋に会いたい。
今日一日で、お寿司同盟とメロンパン同盟に入った。
これって、浮気?
安心してください。俺は今でも、莉乃と千尋が大好きですよ。』
そして、二つの同盟のメンバーとの写真が送られてきた。
光圀のラインに対して、莉乃はこう返した。
『馬っ鹿じゃないの?
私も大好き。
おやすみ。莉乃
PS:言葉と行動で現してくれると嬉しいんだけど(・ε・)』
既読がついたが返事はなかった。
光圀は莉乃からのラインを読み、複雑な思いを抱いていた。