面会
今日は六月十八日日曜日。大塚千尋がこの世に生を受けて二日目である。
「莉乃。」
「お父さん、お母さん。お兄ちゃんまで。」
指原家の人々が面会にやってきた。
「この子の名前は?決めていないなら・・・」
「千尋よ。メンバーの名前から付けたの。愛佳と迷ったんだけど。」
「抱っこさせてくれ。」
会話をしながら、千尋は祖父の腕の中に入った。
「千尋。おじいちゃんよ。」
千尋がうっすらと目を開けた瞬間、悲劇が起こった。
「えーん。えーん。」
産声以来泣いていなかった千尋が泣き出したのだ。
「お父さん。私が・・・」
「頼む。母さん。」
「千尋。おばあちゃんだよ。」
祖母の腕に移った瞬間、千尋は泣き止んだ。
「○○も抱いてみる?」
「嫌な予感しかしないけど。まぁ、一度。」
「はい。千尋。伯父ちゃんだよ。」
「えーん。えーん。」
また、千尋は泣き出してしまい、病院であることを忘れて、走ってくる奴がいた。
「千尋。どうした?」
本日ようやく光圀が病室に現れた。
「はい。お父さん。お願い。」
「あ、はい。義兄さん。千尋。パパだよ。」
今まで男性に抱かれる度に泣いていた千尋は光圀の腕に抱かれると穏やかな笑顔を浮かべた。
「俺たちの何がいけなかったんだ?」
「何があったんですか?」
「光圀以外の男に抱っこされたら、千尋が泣き出しちゃって。」
「あらら。莉乃。千尋の夜泣きは大丈夫だったか?」
「静か過ぎてびっくりしちゃった。」
「そうか。とりあえず、これ渡しておく。」
そう言って光圀が莉乃に渡したのは、百均製の風車だった。
「なんで、風車?」
「いやぁ、お父さんといえば、風車って思って。」
「相変わらず時代錯誤なんだから。」
「そう言うなって。なぁ、千尋。あら?寝てら。」
千尋の寝顔を見て、光圀も微笑んだ。