結婚挨拶
光圀と莉乃は車を降りた。
ここは大分県大分市、莉乃の故郷である。
光圀は、スーツを着込んでいる。
海遊館で買ったジンベエザメのネクタイは、封印して、赤い無地のネクタイ、黒のジャケットという夏仕様とはいえ、若干暑苦しい服装である。
「行くか、莉乃?」
「ネクタイ曲がっているから、ちゃんとして。」
二人のやりとりを見ている視線があった。
ただ、回りに人はいない。
そう。莉乃の兄が光圀達を見ていた。
(あれが義弟か。俺も彼女欲しいな。)
莉乃の兄は幸せそうな妹達を見て、一喜一憂していた。
『ピンポーン』
「はーい。」
「お母さん。私、莉乃。」
事前に帰ることと男性(勿論、光圀)を紹介する旨は伝えてあるが、莉乃はどこかよそよそしかった。
「お帰り、莉乃。それと・・・」
「大塚光圀と申します。これ、つまらないものですが。」
「まぁ、立ち話もなんですから、上がってください。」
「失礼します。」
「只今。」
お母さんが出迎えてくれて、光圀は第一関門を突破した。
「お父さん。莉乃達が来ましたよ。」
「あぁ。」
漫画かよと突っこみたくなるように莉乃のお父さんは新聞を逆さまで読むふりをしていた。
「お父さん、お母さん。こちらがお付き合い、交際している大塚光圀さん。」
「大塚光圀と申します。お父さん、お母さんにお詫びしなければいけないことがございます。」
光圀は土下座をしながら、口を開く。
「私は、娘さんと同棲し、娘さんを傷ものにしました。娘さん、莉乃のお腹には、私の子がいます。順序が違ってしまい、申し訳ございませんが、私達の結婚を許していただきたく、挨拶に参りました。」
「ちょっと、光圀。」
「そうか。仕方ない。結婚を許そう。ただし、娘を、娘達を大事にしろよ。」
「はい。」
こうして、光圀は莉乃の両親を説得することに成功した。