04
わざわざ一番高いアイスを選ぶあたり、白間さんらしいと逆に僕は感心した。彼女はブレない人だ。人が何を言おうが、白間美瑠であり続ける。
これもまた、僕が見習うべき点なのかもしれない。柳のように揺れる僕。地に足付けた人生には程遠く感じた。
「じゃあ、買って来ますよ」
ドキドキとしながらレジの前へと向かう。この店のレジは二つあった。片方はパートのおばちゃんで、もう片方は江籠さんが立っている。
いつもの僕なら迷わず江籠さんの方に向かっていた。もし江籠さんの方に先客がいたのならば、僕は適当に時間を潰して調整しているが、今日はおばちゃんの方へ向かうことにした。白間さんといるから、なんとなく江籠さんの方には行きづらかったのだ。
しかし、おばちゃんのほうへ向かっていたら横からおじさんが出て来て、さっさと僕の前に出てしまった。おかげで僕はレジ待ちをする羽目になった。
「こちらへどうぞ」
そうなれば当然、江籠さんは自分のレジへと僕を呼んだ。本当ならば呼ばれるなんて、嬉しさが溢れ出るのかもしれないけど、今日だけは勘弁してほしかった。
それでも、断るわけにはいかなかったから、僕は渋々江籠さんの待つレジへと歩を進めた。
「いらっしゃいませ」
いつもとは違う商品をカウンターへ置く。こんな気分なのに、江籠さんの言葉は相変わらず優しくて、僕の身体を温かく満たしてくれるようだ。
「スプーンはお付けなさいますか?」
白間さんが選んだアイスはカップ型だった。
「あっ、お願いします」
僕は江籠さんの目を見ずに言った。
「ありがとうございました」
お金を払う時も、僕は江籠さんの顔を見ずに支払うと、ドアの近くでニヤニヤとしている白間さんのところへ向かった。
「可愛い店員さんで良かったわね」
「そうですね。はい、アイス」
僕は適当に流すと、自分のアイスだけを取り出して、袋ごと白間さんへ渡した。
「あんた、あの子のことが好きなんでしょ」
外へ出ると、さっそく白間さんは袋からアイスを取り出した。僕も包装紙を開け、中身を取り出す。
「何言ってるんですか。バカバカしい」
僕は内心ドキリとしながらも、努めて冷静を装った。この人に江籠さんのことがばれたらとても危険な気がする。
「あんたって分かりやすい子よねえ。全部バレバレよ」
「だから違いますって。江籠さんのことなんて好きじゃありません」
僕はムキになって言うと、白間さんはスプーンを口に咥えたままニヤリと笑った。
「好きでもないのに、どうして名前なんて知っているのかしらね」
やってしまった。つい、撒かれたエサに食い付いてしまった形になってしまい、僕は必死で言い訳を考える。
「ち、違うんです。僕の同級生。そう、同級生の奴が江籠さんのことが好きで、僕に相談をしているんですよ。だから、彼女の名前を知っているんです」
即興でついた嘘。それを聞いた白間さんは鼻を鳴らした。
「別に人を好きになっちゃいけないって言っているわけじゃないのに」