01
から風が吹きつける中を歩く。アスファルトの境目に躓き、転びそうになった。つんのめるようにして前へ進むと、風が強く吹いた。
思わず僕は壁にもたれかかった。そのまましゃがみ込むと空を見上げた。
空は夜だというのに青色だった。青い夜だ。
満月が輝く青い空は黒い空よりも月が綺麗に輝いていた。
あれだけ泣いたというのに、また涙があふれ出てきた。滲む空。涙が頬を伝って地面に落ちた。
どこからか車が走る音が聞こえた。僕の足は自然と体を立ち上がらせた。
アスファルトをヘッドライトが照らし出した。どうやら車はこちらへ向かってくるようだ。僕は体を壁にもたれかからせたままタイミングを見計らう。
ヘッドライトが近づくにつれ、物音が大きく聞こえた。僕は目を閉じて身を乗り出した。
目を閉じているのに明るかった。悲鳴にも似たブレーキの音が聞こえる。
この感じ、どこかで見覚えがあるような気がする。
思い出たちがビデオフィルムのように頭の中で再生される。記憶という部屋に長年蓄積され続けてきた思い出たちがシュルシュルシュルと音を立てて再生されていく。
ふいにフィルムが止まった。ジジジと動こうとしているのか軋んだ音を立てると、僕は「あっ」と点と点が繋がったような気がした。
これはどこかで見た光景だ。しかもそれは一度や二度ではない。僕はフィルムを強引に動かすと、次のフィルムが写った。
その瞬間、全てを思い出した。そうだ。これは何度も経験していることだ。
思い出した瞬間、僕はまた絶望した。また振出しに戻ってしまった。
次こそはと意気込んで臨んだこの人生。終わりを迎えたはずなのに、きっとまた僕は人生を歩むことだろう。
畜生……僕は歯を噛みしめる。それすら見覚えのある行為だった。
体に衝撃が走る。あれだけ眩しかった世界が暗転した。