「白昼夢」
18
 うんざりとした日々。田舎暮らしという望まない生活を虐げられた僕は逃げ場所のように愛佳の元へと足を運んだ。美月への罪悪感はあったが、すぐにそれは薄れていった。
 遭難者が水を求めるかのように僕は愛佳を求めた。愛佳もまた僕を受け入れてくれた。こんな日々がいつまでも続くとは思わなかった。破滅への道を突き進んでいるという認識はあった。

 けれど止まらなかった。
 止められなかった。



「ねえ。ちょっと話があるの」

 だからこそ美月に呼び出されたとき、僕は全てを悟った。破滅の道はついに突き当りへと進んでしまったようだ。

「単刀直入に言うよ。あなた浮気してるでしょ」

 嘘なんてついても無駄だった。僕が美月の立場であっても浮気だと見抜けるほど僕の行動は安直なものだった。
 言葉を返す代わりに頷いた。こんなシミュレーションは愛佳と関係を持つようになってからいくらでもしてきた。

「そう」

 だからこそ美月の反応は意外だった。シミュレーションの中ではもっと彼女は泣き叫んで僕に殴りかかろうとしていたはずだ。
 それなのになぜこんなにも薄い反応なのだろう。僕にこれから待ち受ける罰はどんなものなのだろうか。

 気が付けば僕は愛佳の元へと足を運んでいた。いつものように。
 頭の中は空っぽだった。何も考えられなかった。明日からのこと。未来のこと。全部もやがかかったように見えなかった。ただ今という瞬間を生きているだけだった。


■筆者メッセージ
デュフフフフフ
( 2021/12/31(金) 18:48 )