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漫画のような音が聞こえた。ビューっと射精する音が確かに僕の耳に届いた。我慢していたおしっこが勢いよく出されるように、精子がとめどなく放出される。
「すごい音。もしかして溜まってた?」
笑いながらそれを受け止める愛佳。まるで動いていないはずなのに息が上がっている僕に対し愛佳の顔は涼しいものだった。
「あーあ。イっちゃった。浮気だね」
愛佳から発せられたその一言で僕は現実世界へと一気に叩き落された。そうだ。これは完全なる浮気行為だ。
愛佳から誘われたかもしれない。彼女が挿入をさせた。そんな言い訳をいくら言っても浮気行為であることに違いはない。
「そんな顔をしないでよ。安心して。ピル飲んでいるから」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「童貞みたいにすぐにイっちゃったこと? そういうお客さん珍しくないし、風俗で働く方としていうなら早くイってくれるほうが楽だし」
「いや、だからそういうことじゃないって」
体はまだ繋がったままなのに会話は繋がらないようだ。ニヤニヤとした笑みを浮かべている愛佳は僕の言わんとしていることはわかっているはずだ。それなのにあえてかみ合わないことをしてくる。
「見てて」
愛佳はそう言うと腰を浮かした。ヌルっと抜けた男性器のあと、瞬きを一回した時間ほどで白濁の液体がボトリと僕の太ももの付け根に落ちてきた。
液体といっても塊だった。痰のように粘り気を帯びている。
「すっごくたくさん出たね。これだけ出したらさぞかし気持ちいいんだろうなぁ。ま、女の私にはわからないけど」
わからないのはこの状況だった。一体どこでこんなことになってしまったのだろう。困惑をする僕に対し、愛佳は手慣れた様子でティッシュを何枚か取ると女性器を拭き始めた。
僕はただそれを黙ってみているしかなかった。太ももに落ちた精液の塊が冷えてきて気持ち悪かったけれど、ティッシュをくれとも言えずにいた。
「なに見てるの。もう一回戦したくなっちゃった?」
肯定も否定もする間もなく萎えかけ始めた男性器がペロッと舐められた。射精したばかりの敏感な男性器がまた勃起するのにはそう時間はいらなかった。