07
だから美月が交通事故に遭ったと聞いたとき、僕はまた新しいドッキリだと思った。
告白ドッキリが上手くいかなかったからってタチの悪いドッキリだ。そう思ったけど、両親の真剣な顔にそれがドッキリではないことを悟った。
いや、交通事故といっても大したことはないだろう。バタバタと準備する両親を横目に僕は自分にそう言い聞かせていた。
そうしなければ震える足では着替えをすることすら手間取っていた。
病院へ駆け込むと院内はシンと静まり返っていた。美月がいるところはどこだと辺りを見渡すと、悲鳴のような叫び声が聞こえた。
僕たちは急いで声のするほうへ向かうと、美月の母親が警察官に羽交い絞めをされているところだった。
何が起きているのか。いろんな出来事が同時に起きていたせいで僕の頭の中は真っ白で何も考えられなかった。
駆け出す両親。警察官の腕の中で暴れる美月の母親。悲痛な面持ちで立ちすくむ看護師の女性。今何が起きているのか、どういう状況かわかるはずなのにわからなかった。思考が完全にストップしている。
それ以降の記憶はあやふやだった。自分がどう家に帰ったのかさえわからない。
ただ覚えているのは寒くもないのに膝がガクガクと震え、尿意もないのにおしっこが漏れそうな感覚だけだった。