06
だからこそ告白をされたとき、驚きよりもどうせまたイタズラだと思って相手にしなかった。進級したばかりのタイミングだった。
朝、学校について早々引き出しを開けると一通の手紙が入っていた。またかと思うと、そういえば美月は今日ごみ捨ての当番ではないことに気が付いた。
では一体何をやらされるのだろう。教室内に美月の姿がない。まあ、どうせ大した用事でもないだろう。僕は普段通り過ごすと、放課後指定された場所へ来た。
体育館の裏手。部活はすでに始まっていて、各部ボールの音や号令が聞こえる中待っていると待ち人はやってきた。
「で、今日は何の用だ」
「うん。あのね……」
いつもの美月とは違う気がした。ハッキリとしない。何か言いにくそうだった。
「変な物でも食べたんだろ。早く病院に行けよ」
「違うって。はあ、あなたのことが好き」
息を整えて言う美月に僕は固まってしまった。
「今日はずいぶん手の込んだ冗談なことで」
ああ、きっといつものようにからかっているのだと気が付いた僕は突然の告白にも冷静になった。
「まあ、そうだよね」
「なんだよ。どうせいつものように人をからかっているだけだろ」
「違うよ。でも信じてもらえないよね」
眉宇を下げ、悲しげな表情を浮かべる美月はいつもとはまるで別人のように見えた。
「いや、信じる信じないっていうか」
美月のそんな顔を見るのは初めてのことで余裕だった僕の心に動揺が走った。が、心の中ではどうせこれも演技だろうと思ってしまう自分もいた。
「うん。日頃の行いが悪いし。オオカミ少年みたいな」
そう言ってあははと笑う美月だが、どう見てもそれは虚栄の笑みであることは明白だった。
「この場合オオカミ少女だけどな」
「そうだね。うん。忘れて。この話」
ピシャリと扉を閉めるように会話を打ち切った美月は足早に去って行ってしまった。
「なんだよ」
結局彼女に振り回されただけか。
しかし怒りの感情はなかった。むしろ嘘だったとはいえ告白をされると嬉しいものだと気が付いた。次は逆ドッキリを仕掛けてやろうか。
美月はどんな反応をするだろうか。どうせやるならとても驚かせたいものだ。僕はそんなことを考えながら帰路へと着いた。