第8章「同類」
02
 憔悴しきったてちをソファーに寝かしつけると私は疲労感に襲われた。波のように押し寄せてきた疲労感のせいで私は、その場に倒れるようにして横たわった。







 ふいに目が覚めた。寝起き直後の眠気やダルさはまるでない。パッチリと目が開くと、呻くような声が聞こえた。

 点けっ放しの室内はいつもと同じ光景だった。ただ唯一違うのが、今日はてちがいることだった。てちはソファーに変わらず横たわっていた。



 そんな彼女から呻き声が聞こえるのだ。具合が悪いのか。私はすぐに立ち上がって、彼女の様子を覗った。

 泣いているのか目尻から頬にかけて涙が伝った跡が見えた。てちは悪い夢でも見ているのか、呻くような寝言だった。



 まだ十代の少女に科せられた重圧はあまりにも大きく感じた。彼女の苦労を慮ると、私に何が出来るのだろうと自問する。

 キャプテンとして、そして彼女よりもちょっとだけ長く生きている人間として。悪夢を消し去るようにてちの頭を撫でながら熟考するが、答えはなかなか出てきてはくれない。



 と、てちが寝返りを打った。ジーンズが多い彼女にしては珍しくこの日はスカートだった。濃紺のスカートが風で舞うようにしてヒラリと舞い、白い太ももが露わとなった。

 十代の少女の足だ。二十代とはまたちょっと違う。張りのある健康的な色味、そして肉付き。生唾を飲むとはまさにこのことをいうのだろう。私の手は自然と剥き出しになった太ももに触れた。



 ピタっと張り付くような質感だ。スベスベとしていて、それでいてしっとりとしている。矛盾しているような感触だが、確実に一つだけいえるのは触り心地が抜群だということだった。

 男性器が生えてから、男性の気持ちを多少なりとも理解出来るようになってきた。これは触りたくなる肌だ。痴漢は許されざる行為なのは確かだが、今の私は彼らの気持ちも分からなくもなかった。



 だってやっていることは痴漢と一緒だもの――そう自嘲しながらも、私の手が太ももから離れることはない。

 むしろ徐々に上へと向かっていっている。自分の意思ではない。手が勝手に動くのだ。喉を渇かした旅人が水を求めるかのように。



 手がゴムの感触を捉えた。おそらく下着だろう。下着の部分はまだスカートに隠れているが、私の手は絹とゴムに触れていた。

 そういえばあまりてちの下着を見たことはなかったな。中学生でアイドルとなった彼女の着替えを見てこなかった。別に見る気はなかったし、私自身、人に見られるのも恥ずかしかったから人のを見ようともしてこなかった。



 しかし今はどうだろう。見たい気持ちが風船のように膨らんでいくではないか。しかしまだ少し残った理性がそれを止めようとする。

 止めろゆっかー。傷心しきった少女の弱みに付け込もうとするな。それ以上最低の人間に成り下がる気か!

( 2018/09/18(火) 04:17 )