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いざ本番が始まると、私は食い入るようにそれを見た。モザイクの中で膨張した男性器が女性器を突いている。女性の声は嬌声を帯びていて、画面越しからでも気持ちが良さそうなのが伝わってくる。
私に生えた男性器は画面に移る男性のように固く勃起している。うっかり気を抜けばそのまま自慰をしてしまいそうだ。
しかし愛佳がいる手前、それは出来なかった。そういえば愛佳はどうしているのだろう。すっかりビデオに夢中になっていて、愛佳の様子を気にしていなかった。
と、背後から明らかにビデオとは違う声が聞こえた。声というよりも吐息だ。まさかと思いながら私は背後を振り向いた。
愛佳は相変わらずぬいぐるみを抱いたまま、画面を食い入るように見ていた。私の視線に気が付いたのか、慌てて顔を伏せた。
私は立ち上がり、愛佳の横へ座った。ぬいぐるみを奪おうとすると、離してくれなかった。
「ねぇ、今オナニーしてたでしょ」
耳元で囁くと、愛佳がパッと顔を上げた。
「し、してない! してるわけないじゃん!」
「本当に? エッチなビデオ観て興奮してたんじゃないの」
「ゆっかーじゃあるまいし」
鼻を鳴らす愛佳だが、明らかに目は泳いでいるし、暗がりでも頬が赤くなっているのが分かった。嘘をつくのがずいぶんと下手な愛佳を見て、愛おしさを覚えた。
「うん。私もオナニーしたかった。けどね、愛佳がいるから我慢してたの。でも愛佳はしてたでしょ。私がいるのに」
「あっ、ダメ……」
ぬいぐるみの隙間から手を伸ばすと、ズボンを脱がしにかかった。愛佳は口では抵抗していても、身体はさほど抵抗感を見せなかった。
メンバー同士、着替えはよく見かける。愛佳が普段からどんな下着を穿いているのか、毎回見ているからなんとなく予想は付いていたが、いざ脱がしてみれば予想通りだった。
「また黒か。愛佳っていつも黒だよね」
「うるさい。好きなんだからいいじゃない。てかいつもって何よ、いつもって。もしかして毎回見てるの?」
私が頷くと、愛佳は呆れたように項垂れた。
「ほんと変態じゃないの。こんなのがキャプテンなんて、このグループ終わってるよ」
しかも男性器まで生やしています。
罵倒にも私は笑ってやり過ごすと、そのまま下着に向かって顔を埋めた。
「ちょ、何してるのよ!」
「愛佳の真似。そのぬいぐるみ、私のお気に入りなんだよねぇ」
「返す。返すから」
ぬいぐるみを受け取ることなく、鼻に意識を集中させる。シャワーを浴びたとはいえ、替えの下着を持ってきていないのか、ツンと鼻にくる臭いがした。