14
さて。どうしたものだろう。
いきなりボーリングで負けた方がエッチなビデオを購入するという勝負をふっかけられ、いざ勝負をするや確かに敗者である愛佳はビデオを購入した。
彼女が購入したのだから、捨てるも渡すも彼女の自由だが、すんなりと納得出来ない自分がいた。
「うーん。どうしようかなぁ」
「お願い。てかキャプテンなんでしょ。メンバーの守秘義務、そう。これは守秘義務なんだからしっかり守ってよ」
なんでそういう言い方をするのか。カチンときた私にムクムクとサディスティックな一面が現れる。
「ふうん。そういう言い方するんだ」
「な、何よ。急に。え? 怒った?」
さすがに雰囲気を察したのか、愛佳の表情が翳った。ただでさえ先ほどのミッションで憔悴しきった顔が、引きつるような顔になる。
「愛佳がそういう態度なら、私も然るべき対応はするかな」
「何よその然るべき対応って」
「別に。そのまんまよ」
明らかに分が悪い愛佳は唇を噛んだ。
「脅す気?」
「そういうわけじゃないけど」
「そうだったら私、グループ辞めるわよ」
切り札を出してきた。
さて。どうしたものか。別に喧嘩をしたいわけじゃないが、穏便に終わらせられる自信もなかった。
「辞めたらリークしようかな。元メンバーのSさんはエッチなビデオを購入していましたって」
「ゆっかーも共犯だから」
「私は付いて来ただけだし。しかもそう言ったら、ビデオを買ったのは愛佳だってバレるわよ」
沈黙が訪れた。
どちらが破るか。我慢比べのように私は愛佳が先に口を開くのを待った。
「……謝るよ。ごめん」
数分か、はたまた一分も経っていないだろうか。愛佳がボソリと言った。
「謝るって何に対して」
「いや、今日のこと。てかゆっかーそんなキャラだったけ」
「平和主義なだけじゃダメなのよ。時には闘わなくちゃ」
自分でも何を言っているのかよく分からなかったが、雰囲気に押されたのか、愛佳は硬い表情で頷いた。
「で、結局ビデオはどうするの」
「どうしよう」
忌まわしきものを見るかのような目で愛佳が自分のバッグを覗いた。
「じゃあさ、見てみない?」
理解出来ないのか、愛佳は首を傾げた。
「私と一緒に見てみようよ。で、良さそうだったら澤部さんにあげる。悪そうだったら捨てるか、スタッフさんにでもあげればいいわ」
今度は理解した愛佳は、明らかに嫌そうな顔を見せた。
「なに言ってるの」
「だから、私たちが見て決めるの。愛佳もエッチなビデオの話のとき興味津々だったよね。だったら一度見てみればいいのよ。どうせ見たことないでしょ?」
「当たり前じゃない。そういうゆっかーは見たことがあるの」
無料動画はほぼ毎日見ているが、購入して見るのは初めてだ。私はかぶりを振った。
「あるわけないじゃん。だから見るのよ。はい。決定」
嘘は付いてない。
愛佳が強引に押し切ったように、私もこの場を強引に押し切った。