07
「これぐらいかな」
勃起した男性器に向かって何回もポンプを押すものだから、見事にヌルヌルとなっていた。触られると、グチャリと音が聞こえた。
「じゃあ剥くね」
なるほど。泡のヌルヌル感で痛みを軽減させるのか。たっぷりと付着した泡のおかげで、先ほどよりも痛みもなくピンク色の先端が顔を覗かせた。
しかし問題はこれ以降だ。あまりの痛みに耐え切れなかったが、今回は果たしてどうか。私は祈るようにして、泡まみれになったねるちゃんの手を見つめた。
「痛くない?」
「う、うん。ちょっと痛いけど、さっきよりはマシ」
シールが剥がれるように、皮が剥けていく。そう。文字通り皮が剥けていくのだ。これまたピンク色の肌が見えてくると、なんともいえないにおいが立ち込めた。
射精をした時のにおいとは違う。初めて嗅ぐにおいだ。異臭ともいえるそのにおいに顔をしかめるとねるちゃんが指先を向けてきた。
「これが恥垢だよ。いわゆるチンカスってやつ。包茎はこれが出て不衛生だからみんな剥きましょうねって言ってるわけ」
初めて聞くその言葉に、私はただ黙って頷くしかなかった。言っている意味は分からなかったけど、においから不衛生だなと感じ取ることは出来た。
「ほら、この白いのがそう。嗅いでみて」
ねるちゃんの指先には、石鹸のカスのような物が付着している。鼻に近づけられると、顔をしかめた。
「臭いでしょ。アイドルなんだからにおいも気を付けなきゃ」
ボディソープにも負けない強い異臭だ。自分の身体にこんな臭いものがあるなんて。
ショックを覚えると、ねるちゃんがシャワーヘッドを手に取った。
「洗い流すね。痛くても我慢するように」
また苦痛に耐えなくてはいけないのか。しかし泡は洗い流さないといけないし、ましてこんな臭いもの綺麗サッパリ洗い流してしまいたかった。
「ぎゃあー!」
構えていたはずなのに、悲鳴を上げた。痛みは私の予想以上だった。ピリピリとか、そんな生易しいものではなかった。
「逃げないで。この痛みに耐えたら大人になれるんだから」
「無理! 大人になんかならなくていい!」
シャワーから逃げるように背を向けた。しゃがみ込んで、必死に股間を隠す。流れ落ちてくる水滴ですら痛みが走った。
「逃げないで」
「嫌だー!」
狭い浴槽の中で暴れると、ようやくシャワーの音が止んだ。
「もう。大人ちんちんになれないよ、それじゃあ」
「大人ちんちんになんかならなくていい。子供のままでいさせてぇ」
涙を流しながら懇願した。
男性というのは、この痛みに耐えて大人になるのか。私は父親を始めとするこれまで関わってきた男性たちに敬意を示すしかなかった。