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「じゃあ動くね」
感動に浸る暇も無く、瑞希が腰を動かし始めた。入ったばかりのペニスが抜けそうなほどになると、一気に根元まで入っていく。瑞希の尻が僕の太ももに当たり、小気味のいい音を立てた。
セックスをしているのだ。そう実感すると、胸の中で温かなものがじわりと広がった。
「どう、女の子の中は」
ゆっくりとしたテンポから速度をつけたテンポに変わり始めると、瑞希が尋ねてきた。気を抜いてしまえばあっという間に出てしまいそうな僕に対し、まだまだ余裕そうだった。
「気持ちいです。最高です」
「まだまだいくよ」
尻と太ももが当たる音が大きくなる。結合部からニチャニチャと音がしている。僕は回転する遊具に振り回されないように必死に掴まるかのように、歯を食いしばって耐えた。
「キー君のおちんちんいい! 最高!」
僕のペニスが最高? 初めての相手にそう言われた僕は思わず瑞希の顔を見た。
瑞希はニコッと微笑んでくれた。それだけで急に射精感が押し寄せてきた。
「あっ、ダメだもう……」
「え?」
強襲された僕は呆気なくゴムの中へスペルマを放出させた。まさかこのタイミングで射精するとは思ってもいなかったのだろう。瑞希は目をパチパチしながら僕のことを見た。
「ごめん。イっちゃった……」
アダルトビデオの男優は何分も女性器を突いていた。僕なんてものの数分で終わってしまった。
「そうなの?」
瑞希が結合部を解く。すっかりと硬度を下げたペニスにコンドームがおまけのようにあった。
「ま、まあ初めてはみんなそうだから」
さっきまでとは明らかに違うトーンのフォローだった。さすがの瑞希ですらこれは予想外だったのだろう。
「でも三回も出来るなんてすごいよ。さすが若いだけあるね」
瑞希のフォローはかえって僕の心を傷つけた。彼女が悪いわけではない。ただ、思い描いていた理想とはあまりにもかけ離れすぎていた。
「まだ時間も余ってるし、一緒にお風呂に入ろうよ。今お湯を溜めるね」
バスタブに湯を溜め始める瑞希。コンドームが気持ち悪くて外そうとした僕の様子に気が付き、慌てて外してくれた。
「そんなに落ち込まないで」
シャワーで洗い流すと、一緒に浴槽へ浸かった。女の子とお風呂に入ることも夢だったけれど、頭の中は湯煙のように真っ白だった。
「でも、キー君絶対エッチ上手になるよ。
片鱗を見た私が言ってるんだから間違いないよ」
「片鱗……」
「そう。キー君がもっと経験を積んだら私なんてあっという間に
虜にされちゃう。今もそうだけど」
あの日、瑞希は嘘をついた。あれからたくさん経験を積んだはずなのに、僕は全くセックスが上手にならなかった。
それからもう一つ。瑞希は僕のになんてならなかった。