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瑞希の手にはボウルのような容器があり、中はジェルのような物が入っていた。あれが身体に塗られていたのか。そう考えるとあれはローションというやつだろうか。
まだ誰ともセックスをしたことのない僕は、ローションという言葉は知っていても実際に使ったことはおろか、見たことすらなかった。
「これがローション?」
「そうだよ。ヌルヌルして気持ちいいんだ」
仰向けの状態で僕の腹部にローションを塗りたくる瑞希は、バスタオル一枚だった。この下はおそらく何も身に付けていないはずだ。
アダルト雑誌で女性の裸は見たことがあるけれど、実際に目の当たりにしたことがない僕は、手を伸ばせば触れるほどの距離にいる瑞希の裸体を想像しペニスに血液が集まるのを感じた。
「あは。気持ちいいんだ」
瑞希とは違い、バスタオルで隠されていない僕の性器は先ほどと同じように勃起し始めた。勃起することはある程度恥ずかしくなかったけれど、勃起する理由が中学生じみていて情けなかった。
「じゃあここは念入りにやってあげないと」
ボウルからローションを両手で掬うと、瑞希はいきり立った僕のペニスへ注いだ。先端から陰毛までローションにまみれると、瑞希はペニスに手を添えた。
「イキたくなったらいつでも言っていいからね」
瑞希の手が滑らかに動く。ローションもあるが、女性に愛撫されているということもあっていつも自分でしているよりもはるかに気持ちがいい。
「み、瑞希、さん……」
腰が勝手に浮いてしまう。にちゃにちゃといやらしい音が今している行為を如実に表している。僕は一方的に責められているだけなのに、息が上っていた。
「なあに?」
僕が気持ちいいことを分かっているくせに瑞希はあえて知らないフリをした。
「あんまり、する、とぉ、イっちゃうよ」
「じゃあ、しなーい」
ニュルッと瑞希の手がペニスから離れた。支えを失ったペニスはブルンブルンと揺れて止まった。
「え……」
「だってイキたくないんでしょ」
「そんなことは一言も言っていない!」
思わず上半身を起き上がらせた僕に、瑞希は声を上げて笑った。
「ごめん。冗談。お兄さん見ていると可愛くてつい。許して」
瑞希の顔が近付いてくると、唇に温かい物が触れた。僕は反射的にまた目を閉じた。
「そうだ。ところでお兄さんの名前は?」
「あ、桐谷です」
「ふうん。じゃあキー君って呼ぶね」
あだ名なんて付けられるのは子供の頃以来だった。二十歳を過ぎてキー君なんて子供じみていて好きではなかったけれど、女性から親しみを込めてそう呼ばれるのは悪くない気分だった。