18
背後から手を回し、胸を揉む。通常の人間ならば脂肪に包まれた双丘だが、友梨奈の胸は果たして何で作られているのだろう。
力の入れ具合で形が変わる胸を揉みながら、僕は疑問を捨てることにした。そんなことを考えていても野暮なだけだ。
友梨奈の吐息が荒く、艶を帯び始めてきた。胸を揉まれて感じる。人間らしいじゃないか。むしろ、演技をしているあんな奴らよりもよっぽど人間味がある。
僕はTシャツを脱がせた。手錠をさせてあるから、万歳をさせて脱がせてやった。きっと僕と同世代ぐらいの父親は、子供の洋服をこうやって脱がせるのだろう。しかし僕は未だ独身であり、人形を相手している。
空しさはなかった。そんなものはとうの昔に捨てている。
そう。鈴木と飲んだあの夜に。
「何だよ、薄気味悪いことを言いやがって。俺とお前は違う。断じて違う」
ただでさえ惨めな生き方をしているというのに、これ以上なぜ僕は惨めな思いを受け続けなければならないのだろう。前世で僕はどれほどの深い業を背負ったというのか。
あの頃は罰論が多かった。悪さをしては罰が当たる、今の境遇は前世からの報いを受けている。そういわれ続けてきた。
今になって思えば、勝手な理屈である。けれど当時の僕は、頭を悩ませていた。前世の行いをどうすれば消え去ることが出来るのだろう。お寺にでも行って、お布施でもすればいいのだろうか。辛い浪人生活の中で、僕は
藁にも
縋る思いだった。
「まあ、認めないなら認めなくてもいいよ。ただ現実から目を逸らして、お前、環境が変われば今の境遇が変わると思ってるだろ」
酒臭い息を吐きながら言う鈴木の言葉に、僕は胸を打ち抜かれた気分になった。
「それは……そうだろ。環境が変われば変わるさ。汚い水に住んでいた魚だって、綺麗な水に住めば変わる」
「そもそも汚い水に住まない魚もいるけどな」
鼻を鳴らした鈴木に僕はムッとした。年下のくせに。
「さっきからなんだよ。えらく挑発的じゃないか。大学じゃ影が薄いくせに」
「それはお前も同じだろ。っと、俺はお前と喧嘩をしに来たんじゃない。落ち着け」
「僕は落ち着いてる。お前が人の
癇に障るような言い方をするんだろうが」
また座敷から歓声が上った。見ると、今度は違う女性が男とキスをしていた。
「羨ましいか」
鈴木は座敷の方を見ずに言った。代わりにビールをグッと飲んだ。
「それはそうだろ」
見ているだけで辛くなってきた。それでも目を離せずにはいられなかった。キスのあとにもしかしたらセックスをしてしまうのではないかという期待があったし、女性はスカートを穿いていた。もしかしたらパンツを拝めるかもしれない。
見た目はまるでタイプじゃなかった。いかにも軽率そうな外見だったけれど、下着は見たかった。
そんな僕に鈴木は鼻を鳴らすだけだった。