第六章「卵焼き」
05
 新聞部の部室を前に、圭介は躊躇していた。
 どうも部活へのやる気が湧かなかった。圭介は、ドアノブに伸ばしかけた手を引っ込めた。

 今日は休んでしまおう。ズル休みすることに、圭介は心を傷つけたが、いざ決めてしまえばもう迷いはなかった。圭介は来た道を戻り、下駄箱へと向かおうとすると一人の女生徒と目が合った。
 堀未央奈だった。髪をポニーテールにした彼女の目はくっきりと上がり、猫のような目だった。ジャージを着ているから、きっとこれから部活なのだろう。

「君、確か新聞部の子、だよね?」

 彼女の声を聞くのはほとんど初めてだった。話しかけられたことに、圭介は気恥ずかしそうに目を逸らした。

「そうだけど」

 窓の方を見ながら、圭介はぶっきらぼうに言った。

「ちょっと来て」

「わっ、ちょっと」

 いきなり堀未央奈に手を掴まれ、そのまま引っ張られた。
 グングンと進んでいく未央奈。圭介は足をもつれさせながらも、されるがままになっていた。

「ここは」

 未央奈に拉致されるように連れて来られたのは、外の倉庫だった。ここにはハードルやコーンが並べられている。

「で、ここまで連れて来て何の用?」

 埃臭い倉庫に連れ込まれ、圭介は不機嫌だった。どうせ掃除の手伝いをしてくれとでもいうのだろう。せっかく人が部活をサボって帰ろうとしていたのに。

「脱いで」

「は?」

 未央奈の言葉に、圭介は素っ頓狂な声を上げた。

「だから脱いで」

「何で」

「セックスするため。それ以外ないでしょ」

 さも、当然といわんばかりに言い放つ未央奈に、圭介はわけがわからなかった。

「えっと、冗談、だよね?」

「冗談なんかじゃないわよ。みなみから多少、君のことを聞いているの。で、君でいいかなって」

 言うと、未央奈はおもむろにジャージを脱ぎ始めた。

「ちょ、ちょっと、堀さん」

 突然の奇行に慌てふためく圭介に、未央奈はニッと笑って見せると、見せ付けるようにスポーツブラを脱いだ。

「私の胸、小さいけど、変じゃないよね?」

 言うように、小ぶりな胸が露わとなった。薄茶色の小豆のような乳首はすでに勃っている。

「ほら、君も」

 下まで脱いだ未央奈は、靴下と靴を履いただけの姿となった。整えているのか、陰毛は綺麗な形をしていた。

「いや、堀さん……意味がわからないよ」

 急に裸になった同級生。夢を見ているようだ。

「私ね、人より性欲が強いのか、ダメなんだよね。ムラムラしちゃって。いつも部活で発散しているけど、今日はもうそれだけじゃ抑え切れなさそうなの」

 媚びたような声だった。擦り寄る未央奈。圭介は後ずさりしたが、簡単に捕まってしまった。

「ね、しようよ」

 身体に手を回され、甘ったるい声が聞こえたかと思えば、圭介のペニスがズボンの上から撫で回されていた。

( 2017/06/16(金) 23:23 )