06
記事を作成しながらも、圭介の頭の中はイクタエリカでいっぱいだった。どういう字を書くのだろう? 小ざっぱりとした雰囲気がありながらも、気さくさも持ち合わせているような感じがした。
ピアノを弾けるということは、生粋のお嬢様か。古典的な考えを持つ圭介は、ピアノが弾ける女性はお嬢様タイプだと思っている。
丸みを帯びた尻。不可抗力とはいえ、この手がそこに触れていたのだ。ノートパソコンのキーボードを叩く手を見ていると、あの日の感触が蘇り、ズボンの下でペニスが勃起し始めた。
七瀬や伊織がいるのに、圭介のペニスはお構いなしに勃起する。チラリと二人の様子を伺うが、七瀬は相変わらずスケッチブックを睨むようにして絵を描き続けていたし、伊織は頬杖をつきながらパソコンの画面を見ている。どうせ画面は洋服が映っていて、記事なんて書いてやしないだろう。
二人の様子を見ていると、結局三人集まろうが、真面目に活動をしているのは自分一人だけなのだと、圭介は気付かされた。
なんだかバカバカしくなってきた圭介は、途中まで書いた記事を保存し、席を立った。この調子では、まともな記事なんて書けやしない。
「ちょっとトイレに行ってきます」
「行ってらっしゃい」
圭介のことを見ずに七瀬は言った。
横にいる伊織のことを見るが、彼女は言葉を発しないどころか、圭介のことも見ようとしなかった。
部室を出ると、圭介は深い溜め息を吐いた。美少女二人といるが、発展なんてまるで期待できそうにない上、仕事だけを押し付けられている。
本当にこんな部に入って良かっただろうか。無論、先の橋本奈々未の件でおいしい思いはしたが、新聞部とは関係がない。唯一の希望は、イクタエリカだけだった。
「あっ、いいところにいた」
用を済ませ、テニス部の部室を通り過ぎようとしたときだ。部室から聞き覚えのある声がした。
「星野さん。どうしたんですか」
星野みなみだった。部室からチョコンと顔を出す姿は、洞穴から顔だけを出して辺りを警戒するウサギのようだ。
「いやあ、部室の掃除を命じられちゃって、今やってるんだけど上の方が届かなくて」
きっと先の件で懲罰の代わりに掃除を命じられたのだろう。
和也との情痴の光景がフラッシュバックする。この舌足らずの声が甘い嬌声に変わり果て、和也の手で淫らに悶える姿。尿を出し、ようやく落ち着いたペニスが再び反応しそうになった。
「ちょっと手伝ってくれない?」
「いや、でも」
先の一件がある。これ以上テニス部に関わるのは間違いなく危険だった。
「ね、お願い。手伝ってくれたらちゃんとお礼をするから」
手を合わせて懇願するみなみに、圭介は渋い顔をさせながらも頷いた。