第二十一章「運命」
01
 夢を見ていた。
 新聞部の部室に圭介はいた。なぜか七瀬の席には絵梨花が座っていて、隣の席には伊織ではなく、みなみが座っている。三人は談笑しているというよりも、試験前のように押し黙っていた。
 答案用紙を目の前にしているかのように沈黙が重たかった。試験官の合図があれば、答案用紙をひっくり返し、ペンを走らせそうな勢いだ。

 と、ふいに椅子が引く音がして圭介は絵梨花が座っている席を見た。しかし絵梨花の姿はなかった。どこへ行ったのかと思った瞬間、下腹部に刺激が走った。
 よく知っている刺激だった。この学園に入学するまでは知らない刺激であり、ずっと夢に見ていた心地良さ。視線を落とすと、絵梨花が机の下に潜り込むような形でペニスを愛おしそうに舐めていた。
 すでに硬直したペニスにザラザラとした感触が心地いい。圭介は恋人である絵梨花にフェラチオをされ、恍惚とした顔を見せると視界が真っ暗になった。

 何も見えなかったが、柔らかなものを押し付けられていることはわかった。圭介が手を添えると、形をむにゅりと変え、「あん」という艶かしい声が聞こえた。
 掌を広げては閉じる。指先が突起物に触れると、“それ”は圭介の顔から離れようとした。しかし、圭介の唇が突起物に吸盤のように吸い付いた。チューッと音を立てて吸うと、またしても「ああん」という艶かしい声が聞こえた。

 それがみなみの胸だとはすぐにわかった。押し付けられた瞬間にわかると、圭介は赤ん坊のように胸を求めた。ペニスはずっと恋人に舐められたままだ。
 チュパチュパと乳首を吸う。そうすると、ペニスにも同じような刺激が与えられた。圭介は母乳を求めるかのように、絵梨花は精液を求めるかのように。

 どうしてこんなことをしているのだろうという疑問はなかった。これは夢だから。夢の中では罪悪感もなければ、疑問点も見つからなかった。
 答案用紙に書いた答え。正解を書き込んだのと同じだった。これをするのが当たり前のことだった。

 やがて圭介は「うっ」っと小さく呻くと、スペルマを放った。絵梨花の顔に向かって出したはずなのに、なぜかみなみの顔も汚れた。
 二人の顔には精液がベッタリと付着している。圭介が拭いてやろうとしたら、パッと目が覚めた。真っ暗な部屋だったが、横に人がいることはわかった。そしてそれが誰なのかも。

 記憶の糸を手繰り寄せる。昨夜は天気が良かったはずなのに、日奈子はやってきた。予報外れの雨のように。
 セックスはしていないはずである。ただ一緒の布団に入って、文字通り寝ただけだ。
 目が暗がりに慣れてきた。隣で眠る日奈子は口を半開きにして気持ちよさそうに寝ていた。

( 2017/07/01(土) 00:24 )