06
最後の一滴まで伊織の中に注ぐようなイメージだった。膣からペニスを抜くと、ヌルリと音がしそうだった。ペニス全体にローションを塗りたくったように濡れていた。
「後始末をしますね」
クルリと身を反転させた伊織はそう言って、片膝を着いた。
「これが今まで中に入っていたんだって思うと……んっ」
最後まで言い切らないうちに、舌がペニスの裏筋を這った。いわゆるお掃除フェラを受ける格好となった圭介は、伊織の髪を撫でた。CMであるようなサラサラとした黒髪はどう維持しているのだろう。
「ねぇ、ご主人様は運命の赤い糸って信じますか?」
舐めながら伊織が訊いてきた。シチュエーションと質問がアンバランスだった。
「運命の赤い糸? なんでまた急に」
「私はずっと否定的だったんです。そんなものドラマや漫画の世界だって。でも最近それを信じられるようになってきたんです」
嫌な予感がした。どう考えてもその糸の先は自分が繋がっているような気がしてならなかった。
「へえ。そうなんだ」
ヂュっと音を立てて先端を吸われ、圭介は小さく呻いた。
「で、ご主人様は信じます?」
どうだろう。圭介の頭に様々なものが去来する。絵梨花との出会い。満員のバスで尻を触ってしまったこと。あれは運命の糸なのだろうか。
占いの類を信じているわけではなったが、かといって否定する気もなかった。朝の占いで自分の誕生月がいい結果だと満更でもなかったし、悪い結果だと気分がいいものではなかった。
「……信じる、かな」
そうは言っても、自分の赤い糸の先に繋がっているのは伊織ではなく絵梨花だ。絵梨花の顔を思い浮かべながら、圭介は搾り出すように言った。
「やっぱり。ご主人様ならそうだと思いました」
彼女は自分のことをどう見ているのだろう。ペニスを嬉々として舐めている様子は娼婦のようにしか見えなかった。
「ところで、ご主人様の家のインターネットケーブルは何色ですか?」
「ケーブルの色? 何色だったかな」
この場にそぐわない質問が続いた。圭介は自室のパソコンを思い出そうとした。
「確か青だったと思う」
太いケーブルは青色だったはず。そこから某会社の回線に繋がっている。
「同じ。やっぱり伊織とご主人様は運命の赤い糸。いや、『運命の青いケーブル』で繋がっているんですね」
両手を合掌させた伊織は、目を見開きながらそう言った。
「嬉しいな」
欲しかった物を買い与えられた子供のように伊織は顔をほころばせると、口を大きく開けてペニスを飲み込まんといわんばかりに中へと入れた。
鼻歌を歌いそうなほどの機嫌の良さでペニスをフェラチオする。圭介はその様子を見ながら、誰も入ってこないでくれと願った。