第十九章「罰」
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 箱を運び終えると、圭介は手持ち無沙汰になった。手伝おうにも、何をしたらいいのかわからなかった。

「他に何をすればいいですか?」

「そうね。今からこのポスターを貼るから、ちょっと手伝ってくれる」

 そう言うと麻衣は椅子を片手に移動を始めた。

「この辺でいいかしらね」

 靴を脱ぐと、麻衣は椅子の上に乗った。圭介は画鋲とポスターを持って見上げた。

「ごめんなさいね。今時の子の短いスカートなら見えたかもしれないけど、先生のスカート長くて見えないでしょ」

 圭介を見下ろしながら麻衣はクスリと笑った。

「いや、そういうつもりは……」

 見えていないのに、恥ずかしそうに圭介は顔を背けた。

「冗談よ。ジョーダン」

 柔和な笑みを見せると、麻衣は「よいしょ」と言いながら爪先立ちになり、ポスターを壁に貼った。圭介は椅子を押さえると、白いふくらはぎが見えた。
 筋肉質とはいえないが、無駄な脂肪も無く、柔らかそうなふくらはぎだった。その上にはきっとこれまた柔らかそうな太ももがあって、女性らしい丸みを帯びた臀部があるはずだ。

「曲がってないかしら」

「ちょっと右が下がっていますね」

「これくらい?」

「そうですね」

 画鋲でポスターを固定すると、麻衣が椅子から下りた。

「アニメとかだったらさ、ガクンとして男の子が『危ない』って受け止めるんだろうなぁ。それで女の子と密着して、お互い顔を赤くしちゃうの」

 ベタな展開だ。しかし、もしそういう展開になったらどうしよう。理性を保てるか。

「あー。エッチなこと考えてるでしょ。もう。北野君ってほんとムッツリスケベなんだから」

 思考を読まれたのか、麻衣に肩をべしべしと叩かれ、圭介は頭を掻いた。

「そんな俺、考えていることわかりやすいですか」

「そうね。ま、年頃の男の子の考えることなんて単純よ。特に北野君みたいなタイプはね」

 隣に移動し、またポスターを貼っていく。

「俺みたいなタイプってどんなタイプですか」

「一見真面目そうに見えて、状況に流されやすいタイプね。真面目なんだけど堅物とまではいかなくて、むしろ人に流されて自分を見失っちゃうタイプ」

 当たっている。養護教諭とだけあって、そういったメンタルの部分も熟知しているということか。

「すごいですね。当たってます」

「ま、みんな同じようなものだけどね。国民性みたいなものよ」

 あっけらかんと言い放つ麻衣は、二枚目のポスターを貼り終えた。

「じゃ、次は反対側ね」

 椅子から下りる麻衣から、香水のようなにおいがフワリと漂った。

( 2017/06/26(月) 22:06 )