第十九章「罰」
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 ザラリとした舌の感触に奈々未はゾクッとした。性器を舐められたことはあっても、足の裏を舐められるのは初めてのことだ。ザラザラとして生温かな舌が舐められたことのない場所を這う。違和感はすぐに消えた。
 むしろすこぶるほどの快楽が駆け巡った。『クイーン』というあだ名は好きではなかったが、今はそのあだ名がしっくりくると自分でも思った。

 特定の性癖を持っている人間は確かにいる。奈々未自身、それを否定するつもりはない。ただ、気になっていることはあった。足の裏を舐めさせるという行為だった。
 さぞかし屈辱的だろう。そう思えば思うほど、舐めさせたかった。しかしそのチャンスは果たしてくるだろうか。大人になってSM嬢にでもなれば可能かもしれないが、その道に進む気になんて到底なれなかった。
 できればその道に進まなくとも経験をしたい。彼氏でも作ればいいのだが、彼氏にはそんな屈辱的な真似をしてもらいたくなかったし、そんな弱弱しそうな男とは付き合いたくなかった。

 空想ばかりが風船のように膨らむ。いっそ破裂するまで膨らませようと思っていた矢先こんなチャンスに恵まれるなんて――。圭介は奈々未のタイプではなかった。しかし数少ない男子生徒ということで注目していたのが功を奏した。
むしろ付き合えば付き合うほど味の出る男かもしれない。
 感情をなくしたように自分の足の裏を舐める圭介を見下ろしながら、奈々未は性器が濡れてくるのがわかった。下腹部から甘くて切ない疼きがする。

「足の裏だけじゃなくて指も舐めなさい。咥えるように」

 圭介と目が合った。彼の目は虚ろで、生気がなかった。

「はい」

 機械のようにそう返事をすると、指をチュパチュパと音を立てて咥え込んだ。

「ああ……いいわよ……すっごくいい」

 足の指を咥えられ、奈々未は恍惚とした声を上げた。まるで足が性器にでもなったかのようだ。

「どう。私の足は美味しいかしら?」

 自然とそんな台詞が出てくる。油断していると涎まで出てきてしまいそうだ。

「はい。美味しいです」

 指の間を舐められると、奈々未の身体はビクンと跳ねた。軽く絶頂したのだ。

「ちょっと待ちなさい」

 もっと深く――浅瀬のような絶頂では今の奈々未では満足できなかった。圭介の動きを止めると、奈々未はジャージを脱いだ。青いサテン生地のショーツもいそいそと脱ぐと、枕もとの柵に身体を預けるようにもたれかかった。

「あなたもベッドの上に乗りなさい」

「はい」

 圭介がベッドに乗ると、二人分の体重を受けたベッドが軋んだ音を立てた。

「さ、続きを」

 再び圭介に足の裏を舐めさせると、奈々未は自らの性器に触れた。
 そこはすでに十分な潤みを持っていた。滾々と湧き続ける泉に指を入れると、底なし沼のようにズブリと指が飲み込まれていった。

( 2017/06/26(月) 22:03 )