06
放課後を迎えた。みなみの希望は消化不良に終わった感があるが、これ以上はどうすることもできなかった。一応本人には伝えた。それだけで及第点だろう。
圭介は報告をするためにみなみを探しにテニス部のコートを覗いた。ジャージを着た何人かの女生徒がいるが、みなみの姿は見つけられなかった。
まだ部室にいるのだろうか? 放課後の喧騒の中を圭介はテニス部の部室を目指し歩き始めた。
部室の前に付き、圭介はしまったと思った。一度新聞部の部室へ行って道具を持ってくればよかった。HRが終わると、すぐにみなみのクラスを訪れたが、すでに本人は不在らしくそのまま捜し求めてここまで来てしまっていたから、今の圭介は手ぶらだった。
友好的な部ではあるが、手ぶらのまま来るのはまずかった。このまま一度教室までカバンを取りに行ってから新聞部の部室へ行こうか。そう悩んだときだった。急に目の前の扉が開いた。
「わっ! ビックリしたぁ。なんだ、北野君かぁ」
タイミングよく出てきたのは、ジャージ姿のみなみだった。髪の毛をツインテールにしている。
「ごめん。でもちょうどよかった。探してたんだ」
「みなみを? 何かしら」
「和也の件だよ」
「ああ。それね」
今朝自分から頼んできたはずである。この反応からして、さほど重要なことでもないようだ。
そう考えると骨折り損な気がしてきた。結局、和也が言うようにみなみと和也は似た者同士であるから、さして問題じゃないのだろう。ただ不満を誰かに言いたかっただけなのかもしれない。
「ここじゃあれだから、中に入ってよ。大丈夫。誰も終わるまで来ないから。たぶんだけど」
自分の部屋のように部室へ案内するみなみの後に続いて、中へと入った。部室はデオトラントスプレーのにおいが充満していた。
「で、なんだって」
丸いデザインのパイプ椅子に腰を下ろすと、みなみが訊いてきた。圭介は和也から言われたことをそのまま伝えた。どうせそれで嫌われるのは和也である。彼だって圭介がみなみから頼まれているのを知っているから、そのまま伝えることをわかった上でああ言ったのである。
和也には感謝しているところが多々あった。相談も乗ってもらっているが、絵梨花との交換セックスだけは気に入らなかった。人の彼女を道具のようにしか見ていないのだ。少しぐらい罰が当たった方がいいのかもしれない。
「ふうん。そっか。和也はそんなことを言ってたんだ」
眉根を寄せてみなみは呟くように言った。さすがにセックスパートナーの交換のことまでは話し過ぎたか。不快感からつい、話し過ぎてしまったのかもしれなかった。
「じゃあ、いっそ交換してみる?」