03
バスが学園の前に停車した。ゾロゾロと降りていく女生徒たち。圭介はホッと胸を撫で下ろした。
「ね、マジで保健室か部室行かない? まだHRまで時間あるし」
下腹部の辺りが疼いた。いくら昨日絵梨花とセックスをしたからといっても、健全な男だ。朝にはいつも通り朝勃ちしていたし、先ほどみなみに触られたときも反応しかけた。
「行かないって」
「ぶー。つまんないの。つまらない男はモテないぞ」
二人並んで校舎へ向かう。こんなところ、絵梨花に見られては誤解をされてしまうかもしれなかった。嫉妬深いというか、所有欲が高い彼女である。
「モテなくたっていいよ。俺には彼女がいるから」
「あんな堅物どこがいいのかしらね。みなみちゃんと付き合った方が楽しいと思うけどなぁ」
どう考えても自分がみなみと合うわけがなかった。やはり和也とが一番合っているような気がした。
「星野さんには和也が一番合っているよ」
「それって私も浮気性ってこと?」
圭介はコクンと頷いた。
「だってそうじゃないか。俺をこうやって誘惑してさ。相談なら乗るけど、誘惑はよくないよ」
「誘惑しているわけじゃないんだけどなぁ。星野君からかっていると面白いんだもん。みなみいつも和也にからかわれている方だからさ。たまにはね」
結局はオモチャにされているだけだ。そう考えると気が楽になった。みなみとしても本気で和也と別れるつもりなんてないのだ。
「俺はオモチャじゃないって」
妹である日奈子にも言われた。女性に対しては強気に出れるタイプとそうでないタイプがハッキリ分かれているようだ。みなみに関しては明らかに後者だった。
「とにかく、和也には一度言っておく。それでいいでしょ」
下駄箱で上履きに履き替えて、階段を上がった。
「まあそれでいいんだけどさ。何だかつまらないっていうか」
「俺に面白さを求めても無駄だよ」
踊り場まで上がると、その先に見知った女生徒がいた。
「やっほー未央奈。おはよう」
未央奈だった。みなみはさっさと横を足早に過ぎて行った。
「じゃあ和也の件よろしくね」
未央奈の腕を取ってみなみは行ってしまった。教室までもうすぐそこまでだったが、ようやく解放された圭介はフーッと息を吐いた。朝から調子を狂わされた。
しかし和也の件を任されてしまった。悔い改めるなんて無理だろうが、一応話しておかなくては。そう思いながら階段を上がりきると、視界に伊織の姿が入った。
「おはよう。今日は星野さんと一緒なんだね」
どこから見ていただろう。伊織の声はなぜか不機嫌だった。
「おはよう。たまたま一緒になっただけだよ」
「ふうん。そっか」
それだけを言うと、伊織は圭介の横を通り過ぎて階段を下りていった。