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キスをすると、内部に変化を感じた。ギチギチと押し返してきそうなほどの締め付けが和らぎ始めたのだ。避妊具を身に付けたペニスがゆっくりと中に飲み込まれ、またゆっくりと抜かれる。
下半身を繋げ合ったまま、唇を重ねている格好はまさしくセックスのそれで、圭介はアダルトビデオの世界だと思っていたことを自分がやっているのだと思うと、胸が熱くなった。
「……キスされるとダメかもぉ」
唇を離すと、絵梨花が惚けたような目をしていた。どうやらキスは彼女にとって性感帯でもあるようだ。
「そうみたいだね。中も動きやすくなった」
まだ痛いほどの締め付け感はあったが、先ほどよりもずいぶんとよくなっていた。数センチの距離でペニスが出し入れできるまでになっていた。
「もっとしてぇ」
甘えん坊の子供のように、絵梨花は背中に巻き付けていた腕を今度は首の後ろに伸ばした。背中の痛みからも解放されたとあってか、圭介は俄然絵梨花の要求を受け入れた。
今度は絵梨花から唇を絡ませあってきた。鼻息が当たる。もはや相手の唇の味なんてわからなくなっていた。
「絵梨花さん。後ろからしてもいい?」
何分か経つが、一向に射精の気配は訪れなかった。このままでは途中で萎えてしまいそうだった。
「後ろからって?」
圭介の求めたがっていることがわからない絵梨花は、相変わらず惚けた目をしていた。自分だけが気持ちよくなって。圭介にとって、絵梨花とのはじめての性交は気持ちいいというよりは物足りなさを感じさせていた。もっと獣のような荒々しさがほしかった。
「犬の交尾みたいな感じだよ。ほら、四つん這いになって」
一度結合部から解く。赤い血がわずかに避妊具に付着していた。
「やだ。これじゃあキスが出来ないじゃない」
四つん這いにさせると、絵梨花が不満そうな顔を浮かべた。彼女にとって今重要なのは、羞恥心よりもキスだった。
「出来るよ。ちょっと首が痛いかもしれないけど」
アダルトビデオでは女優と男優がキスをしていたから、きっと自分たちでも出来るはずだった。楽観視しながら、圭介は丸みを帯びた絵梨花の尻を撫で回した。
吹き出物の一つもない桃のような尻だった。女性器が丸見えで、その上に茶褐色の肛門が見える。
「やだ。あんまり見ないで」
さすがに圭介の粘っこい視線に恥ずかしさを思い出したのか、絵梨花は手で隠した。
「どうせもう見ちゃったからもういいでしょ。ほら、挿れるよ」
手を退けると、ペニスの照準を合わせた。背後からだと、相手の弱点を攻めているような気持ちになった。
「後ろからって怖いかも」
「大丈夫」
それは絵梨花を励ますというよりは、自分本位な言葉だった。ペニスは先ほどまで挿入されていた小さな穴に飲み込まれた。