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どれだけの時間が経っただろう。五分とも三十分とも取れるほど、時間の感覚がなかった。ふと、圭介は思い立ったかのように顔を上げると、頬を上気させる絵梨花の顔が見えた。
「胸が獲られちゃうのかと思ったよ」
冗談交じりにそう言ってはいるが、明らかに圭介の行為をいい方向には捉えていないようだ。圭介が愛撫し過ぎたせいで、絵梨花の乳白色の胸は痛々しいほどに赤くなってしまっていた。
「ごめん。また暴走しちゃった」
うっすらと乳首に残る歯型の跡を見て、さすがに圭介はやり過ぎたと自重した。
「圭介君って胸が好きなんだね。今度から注意しなきゃ」
本当は痛みを我慢していたのかもしれない。セックスが決して上手とはいえない自分の愛撫に耐えてきたのだ。恐怖心を抱えたままこの嵐が去ってくれることを願いながら、冬のようにジッと堪えてきたと思うと、絵梨花の寛大な心に救われる気がした。
と、同時に絵梨花のそんな寛大な心に甘えていてはいけないと思った。彼女はまだ処女なのだ。ここは男らしく自分がリードをしてやらなければ。
「ごめん」
乳首を吸っていた唇で、絵梨花の唇を塞ぐ。優しく。壊れ物を扱うように。自分にそう言い聞かせながらキスを交わすと、強張り始めていた絵梨花の表情が蕩けるような顔になった。
「私、好きかも。キス」
唇を離すと、うわ言のようにそう言った。
「みんな好きだよ」
離した唇をもう一度重ねる。ニチャニチャと卑猥な音がした。
「ね、そろそろ下、いっかな?」
圭介が言うと、一瞬だけ絵梨花は考える素振りを見せたが、すぐに無言で頷いた。
「脱がすよ」
よくアダルトビデオではキスをしながら女性器へ愛撫するが、圭介は絵梨花の下着、そしてそれを脱がされるそのときの顔がじっくりと見たかった。
ワンピースを脱がせようとすると、絵梨花は恥ずかしそうに顔を手で覆った。いかにも処女らしい反応だ。
「おおっ……」
脱がし終えると、思わず感嘆の声が漏れた。ブラジャーとお揃いのショーツだけを身に纏った姿はエロティックで、卑猥さが引き立たされたようだ。
まるでいけないことをしている罪悪感にも似た気持ちが湧き上がるのを感じる。綺麗なものをこれから自分の手で汚すのだ。
「恥ずかしいよ」
「綺麗です。すごく。パンツも可愛いです」
無意識のうちに敬語になっていた。頭が熱を帯びたようにボーっとする。漫画であるように、興奮で鼻血さえ出してしまいそうだ。
「いやっ、そんなこと言わないで……」
下着を隠そうとした太ももを掴んだ。しっとりとした肌触りで、弾力があった。そうだ。思えば最初に触れたのは彼女の尻だった。
満員のバスで触れた尻の弾力さ。圭介は仰向けで寝る絵梨花に、うつ伏せになってくれるよう懇願した。