第十七章「桃尻」
09
 快楽はペニスを愛撫され、女性器の中でピストン運動させることが一番だと思っていた。けれども、絵梨花とするキスはそれに匹敵するほどの快楽さと中毒性を帯びていた。
 互いの舌が絡み合う。ニチャニチャとした音も、冷めた興奮を再び掻き立たせてくれるようだった。

「んっ……」

 胸をもう一度、今度こそ優しく揉もうと手を伸ばすと、ワンピースがはだけ白いキャミソールが現れた。純白のキャミソール越しから優しく包み込むように揉むと絵梨花から吐息が漏れた。
 感じているのか? セックスを済ませているとはいえ、自分に技量があるとはまだ到底思えていなかった圭介は疑心暗鬼だった。まして絵梨花は処女である。きっと他の男に胸を揉まれた経験なんてないはずである。
 だろすると、感じているというよりは雰囲気に酔っているのかもしれなかった。憧れかどうかはわからないが、彼女だってこういう場面を想定したことはあるはずだ。ましてや彼氏を自室に連れ込むことを考えれば――。

「痛くない?」

 ついばむようなキスに変え、圭介は尋ねた。

「……うん。でも何だか変な感じぃ」

 掌でボールのように形を変える胸。キスと相まって、圭介のペニスはすでにズボンの中でカチカチになっていた。あまりにも勃起しているものだから、早く外に出したかったがまだそのタイミングではないことぐらい圭介でもわかった。

「そのうち慣れるよ。……脱がせるからね」

 キャミソールの裾を掴みながら言うと、絵梨花は無言で頷いた。万歳をさせると、ツルツルとしたワキが見え、思わずドキリとしながらも、平静を装って脱がした。

「恥ずかしい……」

 現れたのはスカイブルーのブラジャーに包まれた双丘だった。大きいと感じていたが、やはりそれはパットなどで誤魔化しているものではなかった。

「可愛いブラジャーだね」

 何を言っていいのかわからなかった圭介は、とりあえず目に入った肌着を褒めた。清楚な絵梨花だから白だろうと勝手に思っていたが、スカイブルーも十二分に似合っていた。

「あ、ありがとう。でもブラジャーを褒めるなんて、ちょっと変態チックだね」

「そうかなぁ」

「そうだよ」

 クククと笑う絵梨花に、圭介はホッと胸を撫で下ろした。そうだ。この調子でいけばいい。
 焦る必要なんてなかった。絵梨花の話では、家族が帰ってくるのは夜とのことだった。まだ日は十分高い。焦ってこの場が流れてしまうことの方が危険性としては高かった。

「でも本当のことだから仕方がないよ。俺がまた脱がしてもいい?」

「……うん」

 さすがにブラジャーを脱がされると知ると、絵梨花の表情が曇った。不安を孕んだ目で圭介のことを見た。

「脱がすよ」

 唇が乾き、ペロリと舐めた。さっきから心臓は壊れてしまうのではないかと思うほど高鳴っていた。
 落ち着け。大丈夫。男と変わらない。唯一違うのは大きさだけだ。そう自分に言い聞かせながら、圭介は震える手でブラジャーを外しにかかった。

( 2017/06/26(月) 21:49 )